第二話 前編

 

 


私立ネルフ学園。
世界的な巨大企業であるネルフグループが出資している学園である。

「ここまでくれば大丈夫ねっ!」
「あ、アスカ……、待って、速いよ」

全速力で走ったのに息一つ切れていないアスカに対し、膝に手をつきながら、苦しそうに話しかけるシンジ。対照的である。

「あんたが遅すぎるのよ」
「ア、アスカが速すぎるんだよ」
 
恐らく一〇〇メートル七秒台のスピードで前を行っている気がする。
ギャグ寄りの世界観だからと言ってもやりすぎではないだろうか。
 
「なに言ってんのよ。これでもアンタに気を使ってゆっくり走ってるのに。
それにアンタもこの天才美少女アスカ様の下僕なんだから少しは走れるようになりなさい。これぐらいのこと下僕として当たり前よ」
 
下僕とは一〇〇メートルを七秒台で走らないといけないらしい。

「なんで僕がアスカの下僕? いつそんな約束したのさ。した覚えないよ」
「なによアンタ、覚えてないの? ……あの時よ、あの時」
「あの時?」
「そう」
 
アスカは唐突に回想へ入った。

 

 

 


夕暮れの公園。数時間前まではたくさんの子どもで溢れていたが、
時間が経つにつれ一人、また一人と居なくなっていき、今では砂場に二人の女の子が居るだけだった。

一人は黒髪の女の子。砂で子供が作ったとは思えないほど精巧なお城(安土城)を作っている。
もう一人は赤毛の女の子で黒髪の女の子の横顔をジッと眺めている。

そしてそんな状態が続いていると、ふいに赤毛の女の子が黒髪の女の子に話しかける。

 

「シンジ」

赤毛の少女が口を開く。

 

「なに?」

黒髪の少女が手を止める。

 

お互いが見詰めあう。

 


そして赤毛の少女が言った。

 


「あんた、私の下僕になりなさい」
「うんっ!」

 

 

 


「…………というワケよ」
「なんだよそれっ、恐ろしく嘘っぽいじゃないかっ! 全く信じられないよそんなのっ」
「う、うっさいわね。とにかくあんたは私の下僕なのっ!」

さすがに下手すぎたと思ったのか、しらけ顔のシンジから目を逸らしてそう言うと、素早く先を歩いていった。

「ちょっ、ちょっと待ってよっ!」
 
慌てて後を追うシンジ。
日々繰り返される他愛のないひとときであった。

 

 

 

そして教室へ。


「おはようヒカリっ!」
「あ、おはようアスカ」

教室に入ったアスカはお下げ髪の親友に挨拶をする。彼女もすぐに言葉を返した。
もちろん親友の彼女とは学級委員長の洞木ヒカリ。性格などは本編や他の二次創作に準拠しているので説明は省略する。
ただ一つ、他と違う設定を言うと、彼女は実は宇宙人である。

「おはよう碇君」

気まぐれで謎設定を追加されたヒカリは、そのことに気がつかず、シンジに言葉を掛けていた。
シンジもにこやかに返事を返した。

「おはよう碇」
「おう、センセ。おはようさん」
 
続いてシンジサイドの友人である。メガネとジャージだ。
基本は本編準拠だが、それよりも五倍増しでエロスということでお願いします。

「それよりもケンスケ、どうして今日のこと、母さんに教えたのさ」

机に鞄を置き、開口一番にシンジは言った。少し恨みを込めた視線をメガネに向けて。

「今日の事? ……ああ、水泳のことか。だって仕方ないだろ、報酬くれるって言うし。
それに逆らえないよ、あの人には。第一、おばさん知ってたぜ、今日水泳あるの」

「えっ、うそっ」
「本当、そもそもおばさんにお前が隠し事しようとするのが無理なの」
「やっぱり無理かな?」
「むりむり」
 
映画に出てくるスパイなど足元にも及ばないほどの情報収集能力を持つユイに、
ヒヨっ子のシンジが隠し事をしても、飼い犬が庭で骨を隠した場所ぐらいにすぐバレる。

「はあっ、ところで報酬っていくらなの?」
「それは秘密。ただこれで欲しかったカメラが手に入るという事だけ教えておいてやろう」
 
カメラの値段がどれぐらいなのか知らないシンジは、ただケンスケの嬉しそうな顔を見るだけだった。

「ところでトウ……ジ?」

先ほどから無言だったトウジに話し掛けようとして凍りついた。

「シンジの胸、シンジのふともも、シンジのふくらはぎ、シンジの」

視線の先には手をワキワキさせて、近づきたくない雰囲気を鎧のように身に纏ったトウジの姿があった。

「トウジ、怖いよ」
「これはもうダメだな」
 
さすがに気持ちが悪い。

「おっと、そろそろミサト先生が来る頃だ。トウジ、戻るぞ」
「シンジのうなじ、シンジのクリんっ? せやな」

あともう少し紡いでいたら間違いなく大切な親友を失っていたという寸前で妄想の世界から帰ってきたトウジ。
まあクリリンと言いたかっただけなんだろうけどね。

 

二人が自分の席へ戻ってから数分後、担任のミサト先生が現れた。

 


「おはよう諸君。みんなのアイドル葛城ミサト、23才独身の登場よん♪」

そう言って謎のポーズ(某美少女戦士のポーズ)を取る彼女こそ、このクラスの担任、葛城ミサト(三十路前)である。
無類の酒好きで人をからかうのが大好きな生活無能者。

「さて、今日の連絡事項ですが、特にありません。ただ」

適当なテンションで話をしていたミサトだったが、ここで一旦、溜めを作った。
そして机の両脇に手を置き、生徒達全員を見渡すと……。

「今日はシンちゃんが女の子になっちゃう日よ〜ん♪」

そう言って喜びを身体で表すように昇龍拳をした。イヤッホウ! という感じである。


「「「「「うおーー!!」」」」」
「「「「「キャーー!!!」」」」」

 

そしてそのミサトに乗じるかのように男子、女子も含め大騒ぎ。
祭りの喧騒、圧政に苦しんだ国の独立記念日のような賑わいだ。
紙ふぶきや、ノートなどの筆記用具、土地の権利書などが乱れ飛ぶ。

「な、なんで、そんなことで喜ぶのみんな……」

自分が女になって水泳をするだけで目の前で狂ったように騒がれては流石に困惑する以外ない。というかもう完全に気持ち悪い。
その後も事態は収拾せず、一時間目がミサトの授業が丸々潰れたが特に問題は無かった。

 


そしてついに水泳の授業に突入である。

「シンジ〜、私こっちだからじゃあね」
「うん、バイバイ」

アスカはそう言うと女子更衣室に入っていく。
シンジはアスカを見送ると男子更衣室、ではなく、職員専用の更衣室に入っていった。
つまりはそういうことである。

「おっ、シンジ君じゃないか」

更衣室に入ると、そこには加持リョウジの姿が。この物語では彼は体育教師である。
やはり性格は本編準拠だが、一つ独自性を付け加えるなら……、ええ、……ええと、彼は何かが凄いらしい。(後ですっごい面白いの考えます)
もちろん生徒達にも人気が有り、生徒のお兄さん的存在である。
シンジも加持には懐いており、よく壊滅的な家庭環境の事で相談に乗って貰っている。

「あっ、ご、ごめんなさい。か、加持先生」

シンジは、着替え中だった加持の下半身に憑いているリョウジ自身をモロに見てしまい慌てて後ろを向く。
ドキドキする心臓を押さえるため両手を胸にあてながら謝った。

「おいおいシンジ君。男同士なんだから、そんなに恥ずかしがることないだろう」
「で、でも、誰かの、そ、そういうのって……そんなに見ることないから」
「ははは、確かにそうだな。シンジ君の年で百戦錬磨でも困る。見たことあるのはお父さんぐらいかい?」
「え……、あ、はい、そうですね。父さんはお風呂上りにわざと僕に見せようとしてきますから」

ふいに、偶然、うっかり、あらゆる手段でシンジの前に素っ裸で現れようとするゲンドウ。
そして自分を見たときのシンジの反応を楽しむのだ。情状酌量の余地もなく犯罪である。
性的虐待だ。

「さ、さすが碇さんだな」
「でも父さんのはもう慣れたっていうか、むしろ可愛いかもって思うことも……あっ!」

つい口を滑らせた。
男でありたい自分が同じ男の性器を可愛いと思うことなんてあってはならない。
変態だと思われる。

「あははは! 可愛いか。そりゃあいい。そう思えれば一人前だな!」
「そ、そんなの僕は別にっ」
「気にするなシンジ君。子どもの頃は大人が美味しそうに飲むビールを見て味見をするが、これのどこが旨いんだって思うだろ?
でも大人になればその良さも分かる。シンジ君のそれもそういうことさ」

「ぜ、全然フォローになってません……」

「そうか? ……ま、君が認めたくなくても君の身体は男と女の性質を経験している。
普通の人間ならありえないことだ。その影響で心もアンバランスになるだろう。男女それぞれの心の在りようが存在しているんだからな。
だから男のアレを可愛く思えるという気持ちになるというのも仕方ないんじゃないか? 君は女でもあるんだから。」

「じゃあ、そう思ってしまうのは僕の女の心ということですか?」
「そういうことになるな。俺は親父のアレを可愛いなんて思ったことはない」
「はぁ……」
「ま、落ち込んでも仕方がないさ。いずれにせよシンジ君はシンジ君なんだから。
そういった性格全てを含んで今の君がある。……俺は今のシンジ君が好きだがな」

「そんな同情みたいなフォロー入りません」
「本心なんだが」

とても素直で物分りの良い子ではあるが、厄介な設定のお陰で厭世観のようなモノを持っている。
率直に言うと諦めがいい。自分に対して投げやり、自信を持てない。

「俺はシンジ君が女にも慣ってくれて嬉しいぞ?」
「……?」

いぶかしむような……、今度はどんなフォローを?
どうせ何を言ったって僕の心は動きません。というような表情。

「だってそのお陰で俺はシンジ君と結ばれるチャンスが貰えたじゃないか」
「な、なにを言ってるんですかっ」
 
少し瞳が揺れて、頬が染まった。好機とばかりにその動揺を広げようとする。

「か、からかうのは止めてください」
「からかってなんていないさ。……いたって本気だよ」
「も、もういい加減にしてくださいっ。……わ、わかりました。取り合えず女の心を持っていても良いです!
どうせどうにも出来ないんだから。加持先生も急がないと授業が始まっちゃいますよっ? 僕にこんなこと言ってる場合じゃないです!」

これ以上色々と言われたら心臓が爆発してしまう。そう顔に書いてあるシンジは顔を真っ赤にしながら加持の背中を押して更衣室から追い出そうとする。

「おっとそうだな。……じゃ、先に行ってるぞ。シンジ君」
「はい、行っちゃってください。僕も着替えないといけないんで」

まだ頬の熱さは取れない。一刻も早く一人になって冷ましたかった。
だが一つ加持に言い忘れていたことがあった。
慌てて呼び止める。

「ん、なんだい?」
「あ、……あの、さっき僕が言った事は」

父親のアレを可愛いと言った事は皆には言わないで欲しい。変態だと思われる。

「もちろん言わないさ、安心してくれ。今日のことは二人だけの秘密だ」
「あ、ありがとうございます。」

そう言って消えていく加持の背中を見送った。
何だかんだ言って自分の事を大切に想っていてくれる教師だ。シンジはそれを強く感じた。
男でもあり女でもあるという複雑な身体を持つシンジが純粋に憧れを持つ相手が加持なのだ。
男女どちらの気持ちでも憧れることの出来る相手だった。今日はやけに甘い言葉をはかれて困惑したが……。


「さ、変わるかな」

しばらく無言のまま佇んでからそう言うと、静かに目を瞑った。
そしてその数秒後、更衣室は淡い光に包まれた。
 

 

 

シンジが水泳の授業の際に何故女の子にならなければいけないのか。
それは去年のある事件がキッカケだった。

五歳の時、ある実験によってカプセルの中で溺れ気絶するという経験をした。
それから水が怖くなり、全く泳げない子供になった。それにより小学生の頃の水泳はすべて見学。
だが中学生になると水恐怖症を克服して泳げるようになろうと決意した。
そしてその堅い決意のもとに挑んだ初めての授業でその事件は起こった。


ちなみにこれも回想です。

 

 

「シ、シンジ〜、あんたホントに大丈夫なの?」
「うん、大丈夫」

心配そうなアスカのその言葉に微笑みながら答えるが、かなり引き攣っていて無理をしていることが手に取るように分かった。

「そう、でもなにかあったら私に言うのよ」

アスカもシンジの決意を知っているだけに、それ以上言うことはなかった。

「ふふふ、ありがとうアスカ」

そんな気遣いが嬉しかったのか自然に微笑み、礼を言う。緊張も幾ばくか解けた気がする。

「べっ、別にアンタのためじゃないわよっ!」

顔を真っ赤にして反論し、スタスタと他の所へ歩いていく。

「ふふふ、アスカ、僕の事心配してくれたんだ」

その後ろ姿を見ながら、シンジは嬉しそうに呟いた。

 

 

 

 


「今日はみんな自由に泳いで良いぞ」

授業のはじめ、開口一番に加持がそう言うと生徒全員が喜びの声をあげる。

「だがシンジ君は今日が初めてだから俺がつきっきりで教える。いいな? シンジ君」
「はっ、はい!」
「良し、じゃあ準備体操を始めるぞ」

 

 

 


そして準備体操後、全員がプールの中で楽しそうに泳いでいる。
何秒息を止められるか競う者。何メートル息を止めて泳げるか競う者。息を止めてビーチボールで遊ぶもの。(止める必要なし)
というかビーチボールは誰が持ってきたんだよ。最初から遊ぶ気マンマンだなおい。

「シンジ君、もっと肩の力を抜くんだ」
「は……、は……い」

本来ならそれを注意するべき加持は今はシンジにマンツーマン。
元々そんなに怒るつもりもないのか微かに苦笑して終わりだった。

「シンジ、落ち着いてゆっくり入るのよ」

プールに入る前からガチガチに緊張しているシンジ。
加持、アスカに促されゆっくり、ゆっくりと足を水の中に沈ませていく。

「どうだ、シンジ君。怖いかい?」
「す、少し怖いですけど、お、思ったより怖くないです」

「だから言ったじゃない。アンタ湯船に入れるんだからプールにだって入れるはずだって。
それなのにアンタ、見たことも聞いたこともないのにできるワケないよっ! なんて訳の解らないこと言って入ろうとしないし」

「そ、そんなこと言われても、こ、怖いものは怖いんだ」
「そうだぞアスカ。誰でも苦手な物の一つや二つ持っているものさ。それにシンジ君は今それを克服しようとしている。それは素晴らしい事だぞアスカ」
「う、うん、それは解ってるけど」
「さあ、シンジ君、そこに慣れたら一段下りよう。そうしたら次は顔を水につける練習だ」
「はい」

恐る恐るもう一段階、深部へと進んでいく。ついに水位は胸に届く。
心臓が締め付けられるような緊張を一瞬感じたが、それもすぐに収まった。
どうやら想像以上のスピードで慣れてきたようだ。
そのまま思い切って顔を水につける。

「3、2、1、0、よしっ、もういいぞシンジ君」

加持がそう言ってシンジの肩を叩く。

「プハッ、ハア、ハア、ハア、ハア」
「凄いじゃないかシンジ君! 短時間でここまで出来るようになるなんて!」
「…………(赤)」

「でも顔を水につけられる様になっただけじゃない。」
「…………(暗)」

「いや、あんなに水を怖がっていたのに、もうここまで出来るようになったのは凄いぞ」
「…………(赤)」

「焦る必要は無い。まずは水に慣れて、それからゆっくり泳げるようになれば良いんだ。急いては事を仕損じるっていうしな」
「はいっ」
「よし、じゃあ今日はここまでにしよう。残りの時間、二人とも遊んで来るんだ」
「分かりましたっ。行くわよシンジ!」
「あ、うん。……加持先生、本当に有り難うございました」
「いやいや、シンジ君が勇気を出して頑張ったからこその結果だよ、俺は大したことはしてないさ」

言われて見ればその通りで、水に入る際に手をとってあげたり、水に顔をつけている時に数を数えただけ。誰でも出来そうだ。
だが加持という存在が重要なのだろう。彼には温かい包容力がある。

「次からどんどんステップアップしていくからな? 頑張ってくれよ。
流石に毎回授業を潰してってわけにはいかないから、放課後になると思うが。まあその時についでに女の子になっててくれたら嬉しいんだが。(ニヤリ)」

「も、もう、またそうやって。(赤)」

でも加持先生が喜んでくれるならそれでも良いかも……。
何もお返しが出来ない身なので、そんな事がぼんやりと頭をよぎった。

「あっ!」
「ど、どうした、アスカ?」
「どうしたのアスカ?」

突然、切羽詰った声を上げたアスカに驚く加持とシンジ。
しかしアスカはそれどころではないという表情。

「アンタいま男の水着だけど、もし女になったらどうすんのよっ!」
 
捲くし立てるように言う。

「そういえばそうだね」

事の重大性に気づいていないのか対照的にほんわかしているシンジ。

「そういえばそうだな」

加持もほんわかと顎をさすりながら言う。
今まで見学中だってなったことはなかったし、男に戻ったのは3日前。
不定期とはいえ大体一週間あるかないかの間隔で変体している。
ごく稀に一日とか三日とかはあるが。

「でも多分大丈夫だよ、そんなに都合良く変わるわけじゃ」

今までの経験則からそうあせる必要はないと考えているシンジ。
他人のことなのに自分以上に焦っているアスカを安心させようとする。
しかしその言葉を裏切るかのようにモエモエの女神は2−Aの生徒に微笑んだ。
迅速な対応とでも言うようにシンジの身体がオレンジ色の淡い光に包まれる。

「シンジっ!」
「シンジ君っ!」

アスカと加持が目の前の変化に驚き、慌ててシンジを呼ぶ。
まさかそんなベタなことがっ!?
そして、その声と光によって周囲の生徒が何事かとシンジを見る。

(ちぃっ、マズイわね。このままだと女に変身したシンジの胸をやらしい男どもに見られちゃうじゃない!
シンジの胸を見て良いのは私だけよっ! 他の奴には一ムネたりとも見せるわけにはいかない!)

 

(となるとこうするしかないわね。(極ニヤリ))

 

アスカはたった一秒でこれだけの思考を展開すると、顔を凶悪な程歪ませシンジに迫った。
そのタイミングでシンジの身体から発せられる光が消え、上半身裸の超絶美少女が現れる。
アスカはその美少女。ていうかシンジの背後に立ち、そして中一にしてはかなり発育が良いその胸を鷲掴みにした。

「ひゃうっ!」

変身した途端に胸をまさぐられ、思わず嬌声をあげるシンジ。

(こ、これは、まるでマシュマロのような……否っ! そんなありきたりの言葉では表現できないわっ!
吸いつくような触感、押せばプリプリと手の中ではじける弾力、可愛らしく自己主張した胸のポッチリを触ることによって奏でられる美声。
これらが三位一体となって触った者に至福をもたらすのね! こ、こりゃあ今夜は眠れんわいっ!)

アスカは何故か劇画タッチな顔で、謎の品評を繰り広げる。
今宵は夜泣きが酷そうじゃわい! と老獪な笑みを浮かべている。

「ふぁっ、ちょ、ちょっとアス……カ! ……くうっ、あっ……、やぁっ!」

シンジは何とかアスカを止めようとするが、突然のこと、そして快感に翻弄され手に力が入らない。
そうこうしている内に、先ほどの光に視界を奪われていた生徒達が徐々に目を開いていく。

するとそこには中学生には刺激の強すぎる光景が展開されていた。美少女の戯れ。
瑞々しくもスタイルの良い中学生の手ブラ姿だ。
しかもその手ブラというよりは手揉みという感じで本気で触ってるし、触られてる方も抵抗むなしく頬を染めて全力で感じている。
そんな桃源郷的光景は思春期を迎えたばかりの生徒達に深刻な被害をもたらした。

次々とバーニアを噴射するがごとく鼻血を吹き出していく。
俗に言うところの鼻血デンドロビウムである。(違うな)
余りの出血量にプールが不気味に赤く染まり出し、その不気味さと正反対に少年少女は幸せそうな顔でプールに沈んでいく。

「お、おい、みんな大丈夫か!?」

その様子を見て加持が慌てて彼らを助けに行く。

「くうっ! あっ、アスカっ……、そ、そんなに……、ひあっ! つ、強い」

シンジは依然、何とかしてアスカの手を胸から離そうとしている。
だが駄々をこねて抵抗するかのようにアスカの指先は動かない。それどころかその悪戯な指先で巧みに先端をもてあそぶ。
指先の魔術師の称号さえ与えてもいい程のテクニック。
シンジはその鋭い桃色衝撃により背を仰け反らし、手を離してしまう。
必死に首を振ってイヤイヤをしているのだが、それさえも徐々に弱々しくなっていく。

「んくっ……、アスカ、も、もう……、あっ……、やっ、……あ、…………あ、あっ、……んっ、んぅぅぅ!」

そしてついに四肢を張り詰め、搾り出すように声を出した。
つまりはそういうことになった。

 


「や、……、ま、まだ……、あ、アスカもう、だ、だめっ、また、あ、あっ、あああっ」


 

これ以降、この様な過ちを繰り返さないためにシンジは水泳の授業の時、女の子になるのを義務づけられたのだった。




 



 




 

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