こんにちは、ルリルリです。
私、皆さんの中でクールキャラで通っていると思います。
愛するアキトさんを柱の影から見つめて、想いを押し留めている。……みたいな?

でも今回はそんな自分のキャラを押し通すことが出来ませんでした。
だってセレナイトさん、いえ、アキトさんが攫われたんですから……。
しかもアキトさんとユリカさんの人生を滅茶苦茶にした、私の想いまでも踏みにじったあの北辰に。

それはもう、とても正気ではいられませんでした。
自室の置物を全て破壊し、オモイカネに命じて意味なくグラビティブラストもぶっ放しました。

ラピスさんもセレナイトさんを失って魂が抜けたようになり、倒れてしまいました。
私はそんなラピスさんに言いました。

「相手が北辰だということは、木連の暗部が関わっているということです。
とすればクリムゾンと何らかの繋がりがあるはず。私達でその痕跡を見つけましょう」

白鳥さんや月臣さんなどの表の主力部隊は武士道精神のある方々です。
奇襲をかけてアキトさんを攫うなんてことはしない。

となるとヤマサキなどのクリムゾンの研究者と木連の暗部が、
セレナイトことアキトさんのマシンチャイルドとしての能力を解析しようとしたに違いありません。

「分かった、ラピス……やる」

抜け殻のようだったラピスさんの瞳に生気が戻りました。
それから私達はオモイカネを使ってクリムゾンに関するあらゆる情報をハッキングし、解析し、一般の部署や秘匿されている研究室に枝をつけていきました。
そしてそれから四日後、事件発生から一週間が経ったころ、ついにオーストラリアのクリムゾンの秘密研究室にアキトさんが収容されているという情報を掴みました。
私はその情報をすぐにアカツキさんに報告しました。

「よし、分かった。すぐに救出チームを編成しよう」

なんの打算もなく、すぐに頷いてくれました。
だけどやはり救出するということは一企業体に対してテロを起こすことと同義です。
木連に通じている企業であり、アキトさんを現に攫っているという事実があっても、確たる証拠を持たなければ正攻法ではいけません。
正々堂々とそんな宣言などしたらアキトさんの無事の保障は完全になくなるからです。

ですから私達はとにかく秘密裏に、そして確実に目標の研究室を襲撃し、アキトさんを救わなければいけないのです。
万が一失敗すれば私たちは立派なテロリストですし、ネルガルも終わりです。でも証拠が上がればクリムゾンとて何も出来ません。
むしろこの事実をいかようにも利用出来るでしょう。

その辺の駆け引きはアカツキさんに任せるとして、
私達がしないといけないのは兎にも角にもアキトさんの救出。なわけです。



「私が必ず師匠を取り戻してきます!」

イツキさんがギラギラとした殺意を漲らせて言いました。
救出隊に志願した彼女は特殊部隊の隊員のように顔面をメイクし、たくさんの銃を装備してやる気です。
今までのイツキさんの性格、実力から言ってアキトさん、セレナイトさんが絡んだ今回の件は彼女一人でも可能な気がします。

ですが念のためにゴートさんやアオイさん、リョーコさんやニコロさんも加わるみたいです。
副艦長は完全に足手まといだと思います。

そしてついに作戦決行当日。
深夜、00:00時、私とラピスさんが表向きは普通の薬品開発研究所である施設にハッキングを仕掛け、セキュリティを無効化。
静かに、且つ迅速に救出隊を潜行させます。しかし途中でアオイのゴミ野郎がしくじりやがりましたので事態が発覚。
警備の人間と乱戦になりました。

私は今でこそ11歳の少女ですが、かつては軍の主力である戦艦の艦長を任されていた者です。
このような乱戦など「いっき」のキス女をかわすぐらい造作のないことです。的確に救出隊を誘導し、秘匿されたエリアに導きました。

そしてそのエリアまで電撃的に行けば、彼らは逆にこのことを公に出来ません。
そこは非人道的な実験も含め、様々な研究が行われる秘密裏に運営されているエリアなのですから……。

「ここを気付かれるとは……」

救出隊がエリア内を走る。その前に立ちふさがったのは、あの北辰です。
私は、画面に映る奴を射殺すように見つめました。
そしてそれは救出隊の人たちも同じだったようです。
特にイツキさんの表情は凄まじく、私に少しの尿漏れを引き起こさせました。

「お前は殺す! 殺す殺す殺す!」

もはやただの鬼女です。
イツキさんは銃を全部捨て、北辰に突っ込んでいきました。(完全武装の意味が全くありません)

その間に他の救出隊はアキトさんの救出に向かいます。
私とラピスさんのハッキングにより空調から監視カメラまで制圧しています。
すぐに目的の場所に到着しました。



「……………………」


その惨状はあまり語りたくありません。
生きていてくれたことは本当に嬉しかった。涙が溢れて視界が歪んだ。
だけど救出までの空白の期間にされていたことの生々しさ。それは見るに耐えないものでした。

救出隊はアキトさんを救出、もう一人のアキトさんも別の部屋で救出しました。
(これからはメインのアキトさんをセレナイトさん、予備をアキトさんと言います)

セレナイトさんらを確保した救出隊は撤収を開始します。
途中でイツキさんも合流しました。北辰を殺したそうです。
彼女には絶対に逆らえません。

途中で監視カメラにヤマサキの姿を見つけたので、
イツキさんに事件の首謀者の一人と告げておきました。
すぐに殺しに行きました。そして殺しました。
彼女には絶対に逆らえません。

その後はシステムを掌握し鬼を擁する救出隊に怖いものなどなく、無事に脱出を完了。
セレナイトさん救出作戦は憎き怨敵を殺害するというパーフェクトな成果を引き下げて、完遂されました。






「セレナイトさん……」

そしていま、私はセレナイトさんが眠る病室の前にいます。


「相当なレベルの性的拷問を受けたようね。裂傷や出血が全身や性器のあちこちにある。膣にも体液が大量に……。
もちろん膣洗浄は済ませているし、マシンチャイルド、特にセレナイトさんのようなマシンチャイルドは妊娠の可能性はあまり高くないから、
その点では心配ないと思うけど……。もっとも確率の問題だから最悪の場合はそれもありえる」


やはりセレナイトさんほどの美貌、そしてあの雰囲気(黒の王子と呼ばれたほどの覇気)がある人に何かをしたいと思うのは人の常なのでしょう。
北辰やヤマサキはセレナイトさんにそういうことをたくさんしたのです。

「いまはとにかく休息が必要よ。だけど一人にするのはあまり好ましくない。だから意識を取り戻した時には極力誰かがそばにいてあげた方が良い」

ということなので、私とラピスさんはトイレの時以外はずっと病室にいました。

「失礼します」

トイレから戻ってみると、ラピスさんが泣いていました。
とめどなく涙を流し、セレナイトさんに抱きついていました。

そしてセレナイトさんも……。

「……ルリちゃん」

救出から一日経って目を覚ましました。

「セレナイト……、さん!」

私もラピスさんと同じように大粒の涙を流し、セレナイトさんに!

「ルリちゃんっ、ラピスっ、良かったっ。……本当に、……良かった」

だけど予想に反して動き出したのはセレナイトさん。
私やラピスさんよりも涙を流してセレナイトさんがそう言いました。
そして私達がするよりも強く私達を抱きしめてくれました。
それからずっと、ずっと、

「良かった、本当に、良かった」

嗚咽しながらそう呟き続けます。

(自分のことよりも私達のことを……)

その訳を聞きました。
北辰に私達が死んだと告げられていたと。
自分を救うための罠に掛かって私達が死んでしまったと。
その事実に心が折れて、堕ちてしまったと。

だけど私達がこうして目の前にいる。
それが何よりも夢のように嬉しい。……セレナイトさんはそう言ってまた泣きました。

(な、なんなんですか、この可愛い生き物は……)

もうセレナイトさんへの想いが破裂してしまった。完全にイカレてしまいました。
この人は自分がどんな辱めを受けたことよりも、私達が生きていることの喜びを思って泣いてくれたのです。

(あぁぁぁ! アキトさん! アキトさんアキトさん!)

好きです! 好きです!好きです!
大好き大好き大好き大好き!

もうこの想いには逆らえない。
私はもうこの人なしでは生きられない!
そう確信しました!

今すぐにでも頬ずりして抱きしめて、ゴロゴロとベットの上を転がりまわって、
チュッチュして、おっぱい揉んで、お尻を触って……。

アキトさんと今すぐ溶け合うように一つになりたい!
そう思うぐらいにアキトさんが愛おしくなってしまいました!

だけどそれはすぐには実行できません。

「師匠!」
「セレナちゃん!」
「セレナイトさん!」

病室にたくさんの人が入ってきていますから。

ですからこの想いを成就させる機会を、また別の時に作ろうと思います。
アキトさん、セレナイトさんの身体が回復したあとに良い機会を……。

























というわけでアレから数日が経ちました。
元から優れた身体能力に強靭な精神力を持ち合わせているセレナイトさんです。
私達の無事も確認したことでさらに意気軒昂となり元通りの体調になり、退院しました。

ナデシコクルーはセレナイトさんが受けた屈辱を知っていましたが、それを思わせてはいけないと務めて明るく振舞っていました。
腕は一流、性格は三流の皆さんでもそういう分別はあるようで安心しました。



さて、私はいま、セレナイトさんの部屋の前にいます。
心臓が非常に早く脈打っています。

一世一代の大博打です。

私はこれからセレナイトさんに告白するつもりです。
先日、私の想いは膨れ上がり、破裂してしまいました。
私はもうセレナイトさんなしでは生きていけません。


この想いを抱いたのはそもそもいつだったのでしょう。
遥か遥か昔、セレナイトさん、アキトさんがあの世界で私と接してくれていた時、オモイカネのバグを共に解決してくれた時、
出自の問題に付き合ってくれた時、ユリカさんと結婚したあと、共にラーメン屋台を引いて方々を歩き回った時、
アキトさんの優しさ、アキトさんの笑顔、アキトさんの温もり……、アキトさんの全てが私の心に少しずつ侵食していきました。
そしてその想いは日々膨らんでいきました。


……だけど、
北辰やヤマサキがその淡い想いを踏みにじった。


『君の知っている天河アキトは死んだ』


復讐に身をやつしたアキトさん。
それを果たしても、アキトさんが戻ってくることはなかった。

「君にはもう一緒に泣いてくれる人、笑ってくれる人、怒ってくれる人がたくさんいる。
そんな君を連れて行くことなんて俺には出来ないし、資格もない。それにルリちゃんには生きて幸せになって欲しいんだ。
それがオレとユリカの願い。だから俺達の分まで幸せになって欲しい。手は差し伸べられないけど二人で見守ってるから」


「さよならルリちゃん。君は俺とユリカの大事な宝物だ。幸せにね」


そう言って、一瞬だけ昔と変わらぬ笑顔を浮かべたアキトさんは……、私の前から姿を消しました。



「アキトさん……。好きな人がいなくなって、それで幸せになれるわけ……ないです」




それが私の想いの全て。
一緒に泣いてくれる人も、怒ってくれる人も私には必要ない。
私に必要なのはただ一人、想い人であるアキトさんだけ。
だからアキトさんがいないこの世界で生き続ける意味など私には見出せなかった。
私は何度も自殺未遂を繰り返しました。

そんな私を見かねたのか、ある時、アカツキさんやイネスさんから話がありました。
ユーチャリスのオモイカネが自爆の際にアキトさんの命令に背きランダムジャンプを行ったこと。(恐らくラピスさんを死なせたくなかったのでしょう)
そしてそのデータを送っていたこと……。(ラピスさんが心配だったのでしょう)

「このデータを解析して同じようにジャンプをすればもしかすると……」

私はイネスさんのその言葉に飛びつきました。
もうこの世界の私は死んだも同然、アキトさん同様、皆の知っている星野ルリはアキトさんがこの世界を去った瞬間に死んだのです。

ですから私はその提案に乗ってランダムジャンプを敢行することにしました。
失敗すれば命はない。ジャンプの先が何なのかは全く分からない。それでも、例え死ぬとしても私は少しでもアキトさんの傍に行けるのならそれで構わなかった。
たくさんの仲間に挨拶もしないまま、(悲しませてしまう。そして薄情なことですが、アキトさんのいない世界などどうでも良いと思ったのです)
私はランダムジャンプをしてこの世界に辿り着きました。

なぜその時の身体ではなく、当時の身体に戻ったのかは分かりませんが、無事にジャンプに成功し、
予想に反し、アキトさんではなくセレナイトさんに出会いました。その辺の紆余曲折は本編のネタとしてお楽しみ頂きたく思います。

とにかく私は再びアキトさん、セレナイトさんに出会えたのです。
そしてついに今日、私の想いが結実するのです。

「ラピスさん、……私です」

部屋の前で言います。
すぐにドアが開きました。

ラピスさんはすでにこちらの陣営に引き込んでいます。
ラピスさんを差し置いて私がセレナイトさんを寝取るわけにはいきません。
攫われた時に心を失ってしまうほどセレナイトさんを想っているのです。
そんな彼女を差し置いて私だけがセレナイトさんを独り占め出来るはずがありません。
想い人が他の人と愛を確かめ合う姿を眺める辛さは私が一番良く知っていますから。

ですからラピスさんをこちらの陣営に引き込み、セレナイトさんを一緒に襲う算段をつけました。
ただ算段と言えるほど策を巡らせているわけじゃありません。
セレナイトさんがお風呂に入っている時に私を呼び出して貰って、お風呂から上がったセレナイトさんを襲うのです。

もちろん告白もします。(赤)

「ラピスさん、今日は頑張りましょう!」
「……うん」

ラピスさんも緊張しているようです。
私達には性的に相手を気持ち良くさせる技術も経験もありません。
せめてもの予習とネットでそういった技術を漁り、それをもとに二人で少しだけ予行演習などもしてみました。
セレナイトさんに不快な想いをさせるわけにはいきませんし。


「……あれ、ルリちゃん、どうしたんだ?」

お風呂から上がったセレナイトさんが私を見て首を傾げました。
バスタオル一枚の扇情的なお姿です。私が男なら勃起している艶姿。……おっと失礼しました。
訓練のためにそう言った作品を数多く見ているうちにある程度下ネタにも耐性がついてしまっていて。
その点から言えば、私はもう少女とは言えないのかもしれないです。

そして本日、本当に少女という役職を返上いたします。

「あ、あの、セレナイトさんにお伝えしたいことがあって!」

内心の軽口とは裏腹に、口から出る言葉は上擦り、振るえています。
だけど勇気を振り絞って前に進まなければなりません。……やってやるです!

「伝えたいこと? なんだい?」

数日前まで酷い目にあっていたことなど微塵も感じさせない優しい笑みです。
私達を慈しみ見守るような……。それだけで私の心は溶けてしまいそうになります。

「あ、あのっ……、実を言うと……」
「…………ん?」

実を言うと……。実を言うと……?
アレ? 私は何を言えば良いんでしょう? どういう風に説明すれば良いんでしょう?

緊張で頭が真っ白です。
心臓の音がうるさくて何がなんだか分かりません。

あ、そうです、告白です。告白をするんです。
でも何を告白すれば? 私が胸よりもお尻派だと言う事でしょうか?
いえ、絶対に違うはず。

おかしいです。
段取りを散々考えたはずなのに、何も思い浮かびません。

え、ええと、まず私の気持ちを伝えます。
でもその前に私の本当の正体を伝えるんです。
その上で気持ちを伝えて……、ん? 私の本当の正体?
なんですかそれ? それは食べ物でしたっけ?

「あ、あのっ、あのっ!」

分かりません! 分かりません分かりません!
私はどういう風にしてこの気持ちを伝えればいいのでしょうか!?
誰か助けてください! 誰か! 誰かっ! 誰かっ!

……た、タスケテケスタ!

「……ルリ?」

ラピスさんが怪訝そうな表情で私を見ています。

「ルリちゃん落ち着いて? ほら、深呼吸、深呼吸」

セレナイトさんも心配そうに私を見つめてきます。
そして私の肩に、背中に手を置いて優しく撫でてくれます。

水滴でうっすらときらめく肌が目前に迫り、お風呂上りの上気した体温と甘い芳香が私を包み込みます。
恐らく私は茹蛸のようになっていると思います。脳味噌も沸騰しています。

「あのっ! あのっ! 私、私っ!」
「うん、ちゃんと聞くから。だから落ち着いて、ね?」

膝立ちになって私の目線に合わせてくれるセレナイトさん。
私を落ち着かせようと、温かな笑みを浮かべてくれます。


その姿は私に記憶のフラッシュバックを引き起こしました。
セレナイトさんの笑顔、セレナイトさんの優しさ。かつてのアキトさんの笑顔、かつてのアキトさんの優しさ、


彼女との……、彼との……、全ての想い出が私の脳裏を去来しました。
そして、気付けば私は行動に出ていました。

「せ、セレナイトさん! 好きです! 大好きですっ!」

そう言って私はセレナイトさんに抱きついていました。


「わっ!」

膝立ちの状態で、急に私が抱きついたので、セレナイトさんは後ろに倒れてしまいます。
自然と私が押し倒す形になってしまいました。

「いたたたっ……、ルリちゃん、大丈夫?」

背中を少し床に打ってしまったセレナイトさん。
それでも私に怪我をさせないようにと抱きしめてくれていた優しさを、もちろん見逃しません。
だけど頭の中はパニックを続行中。

「セレナイトさんっ! ……好きです! 大好きなんです!」

私はなりふり構わない感じでそう叫んで、セレナイトさんの胸元に顔をうずめました。

「んっ」

バスタオルがこすれてセレナイトさんは甘い声を上げます。

私が触ったことでセレナイトさんが気持ち良くなってくれた!
その事実が凄く嬉しいです。

今までも色々、性的なイタズラをしていましたがアレは自由な立ち位置からのイタズラです。
セレナイトさんが気持ち良くなろうが、気持ち良くなかろうが、どちらでも良かったのです。
ただ私の嗜虐心を満たしたかっただけですから。

でも今回は違います。
私の行動一つ一つでセレナイトさんを気持ち良くしてあげないといけないんです。
私がリードしないといけないんです。

責任は重大です。

ですからこうして、一つの行為で快感を与えられて凄く嬉しい。

「ら、ラピスさん! 作戦決行です! もう何が何だか分かりませんので、このまま襲います!」
「……ラジャー」

ラピスさんは私の必死の叫びに淡々と頷いて、近づいてきます。
そして……、

「お姉ちゃん……」
「んっ? ……んんぅ!?」

セレナイトさんの顔の横に座って、その唇をすすり始めました。
ジュルジュルジュル! ジュルジュルジュル! 凄い音です。
実は私達、セレナイトさんとの決戦を向かえる前に二人でトレーニングを積んだのですが、
ラピスさんはことの他、キスが気に入ったみたいで、しかも上達度も凄まじくて、実験台になった私は何度も気をやられてしまいました。
そのえげつないキスがいきなりセレナイトさんに襲い掛かります。

身体を私に押さえつけられている、みたいになっているので身動きがとれず、なずがままラピスさんの口撃を受けるセレナイトさん。
ビクン! ビクン! 身体が時折痙攣しています。……おそらくラピスさんの必殺技、「ラピス・ラズリ(超舌宝玉)」を喰らっているのでしょう。
見えない玉を転がすように、ラピスさんの舌が口内を蹂躙する、酷くえげつない口撃です。

「セレナイトさん! 好きです! 大好きです!」

一方の私は語り部としての冷静さを保ちつつも、もう一方はパニック継続中ですから、同じ事を何度も叫びながらセレナイトさんの胸を堪能するしかありません。
バスタオルの結び目は自然とほつれ、手でずらすだけで胸は露わになります。透き通るような白さと、白桃色に色づく美味しそうな果実が目の前に……。
私は、

「セレナイトさん! 好きです! 大好きです!」

RPGの村人の如く同じ台詞を叫びながら、その果実を口に含みました。

「んふぅ!? んっ、んんぅ!?」

セレナイトさんの甘い声が、痙攣に合わせるように鋭いものに。
だけどそれはラピスさんとのキスでくぐもって聞こえます。だけどその甘さは本当に愛らしく、いやらしく。

「き、気持ち良いんですね?」

私は嬉しくなって口の中で果実を転がします。
舌でツンツンと跳ね上げたり、トントン、とノックしたり……。
その度にセレナイトさんは、

「んぅぅ! んっ! ぅぅ!」

困ったような哀しいような声を出して応えてくれます。
反対側のふくらみは手で堪能します。とても柔らかくて甘い感触。ずっと触っていたい感触です。
口に含んでも甘く、手で触っても甘い。

本当に全身が甘いお菓子で出来てるようなセレナイトさんです。

「ん、んぁっ! ……ちょ、ちょっとルリちゃん! ラピス! いきなりこんなっ、あん!」

ラピスさんの口付けから逃げ出したセレナイトさんが叫びました。
そして私の顔を押さえて、胸から引き離します。

「あっ……」

美味しいお菓子を取られてしまったような感覚。
私は思わず声を上げてしまいました。
ラピスさんも大好きなセレナイトさんとのキスを解除されて哀しげです。

「ふ、二人とも落ち着いて! なんで急にこんなっ!」
「貴方が大切な人だからですっ」

慌てたように私を見つめるセレナイトさん。
最初の一歩を大きく踏み出したことで緊張の糸が解け、冷静さも取り戻した私は、
そんな彼女に事情を説明するべく口を開きます。


「セレナイトさん……、私達、貴方が攫われてから、この世の終わりかと思うくらい落ち込みました。……死にたいと思うくらい」

ゆっくりと、あの時の想いを伝えます。

「貴方は私にとって、ラピスさんにとって、とても大切な人です」

目を逸らさずに、本心を伝えるように言います。

「何としてでも貴方を救いたかった。……だから木連の暗部と繋がりのあるクリムゾンを徹底的に調べ、研究所を片っ端からハッキングし、貴方が捕らわれている場所を探しました」
「ルリ……、ちゃん?」

拉致以降、もはや人としての体面もなく、寝食も忘れ、前後不覚になるぐらい必死になってセレナイトさんを探した。
私達が寝ているその間に貴方が殺されてはなんにもならないから。

一刻も早く貴方を救いたかったから……。

「何より私達には貴方が必要だったから……」
「………………」

「貴方に会って……、貴方と過ごして……、私達は……、私達の心は救われたんです」

セレナイトさんとの想い出が脳裏を去来する。


本当に……、本当に私は救われたのだ。
貴方がいてくれたから……、貴方が私に温もりをくれたから……。


「ラピスも……、ラピスもアキトがいないと生きてる意味はなかった。アキトがいてくれたからラピスは生まれて良かったって思った」
「ら、ラピスっ、そ、それは」

セレナイトさんが焦った声を出します。
だってその名は禁句だから。
セレナイトさん、ではなく彼女はアキトさん、だなんて私は知らないはずだから。

「良いんですセレナイトさん」

もう良いんです。
もう……、良いんです、

私は静かに手を握りました。

「セレナイトさん……、私は、……もう貴方の正体を知っているんです」
「……えっ」

驚愕の表情を浮かべるセレナイトさん。
そしてラピスさんを見ます。

「違いますよ? ラピスさんから聞いたんじゃありません。
私は知っていたんです。貴方が……、貴方がアキトさんだってことを」

「貴方が、ユリカさんを……、愛する人を守れず、世界に、自分に絶望して死んでしまったはずのアキトさんだってことを」

「………………」

もう言葉はありませんでした。
そして私の声も震えていました。

ついに真実を話してしまった。
私はこの世界の星野ルリではなく、セレナイトさんと同じ時間を歩んだ、あの世界の星野ルリであると告白してしまった。


「………………」
「………………」

一瞬の沈黙、静寂のひと時、


『君の知っている天河アキトは死んだ』
『君の幸せを遠くから見守ってる』

そう言って貴方は私の前から姿を消した。
どうして私を連れて行ってくれなかったのか。どうして最期まで家族でいさせてくれなかったのか。
どうして……、愛する人と最期までいさせてくれなかったのか。

その想いが膨れ上がり、私は一縷の望みに賭けた大博打に出た。
そしてその望みは見事に叶い、こうして目の前で再び、愛する人とあいまみえることが出来るようになった。


だけど……、貴方はその事実を喜んでくれるだろうか?
貴方は私という存在を望み、受け入れてくれるだろうか?

託した望みを叶えずに、それを放り投げて後を追った私を、受け入れてくれるだろうか。


もし、受け入れてくれなかったら……、もし、拒絶されたら……。
それが怖くて私はこの世界でセレナイトさんと出会い、彼女がアキトさんであると確信してからも正体を明かせずにいた。


だけどそれももう限界。ここでこの想いを伝えなければ私は私でいられなくなる。
何よりもこの愛しいと思う気持ちを抑えられない。貴方が大好きだと思う気持ちを抑えられない。




「私は貴方にもう一度会いたくて……、もう一度、貴方の傍にいたくて……、もう一度、貴方と……」



『君は俺とユリカの大事な宝物だ。幸せにね』
『好きな人がいなくなって、それで幸せになれるわけ……ないです』

様々な思いが溢れ出してきて、情けないことに涙が溢れてきました。
だけど言わなければなりません。私はこの時のためにこの世界にきたのです。
私は、この言葉を言うために……、ここに! 来たのです!


「私は、星野ルリは……、天河アキトさん、貴方のことを……、一人の男性として、心の底から愛していたから……」


だから……、


「時を越えて……、もう一度、貴方に会いにきましたっ!」



涙を流し、精一杯の気持ちを込めて叫んで……、私はセレナイトさんの胸に顔をうずめました。











「ルリ……、ちゃん?」


静寂を打ち破るように、小さな声でセレナイトさんが呟きます。
状況の整理が出来ていない、という声です。

「………………」

私は返事も出来ず、顔を上げることすら出来ずに、縋るようにセレナイトさんに抱きついたまま……。
審判に怯える被告人のような心境。


静かに判決を待ちます。


「ルリ、ちゃん……」

セレナイトさんがもう一度、呟きました。


「ルリ……、ちゃん、なの、か……?」

さらにもう一度、
私は、ようやく……、

「はい」

その一言だけ返せました。
ですが、顔を上げることは出来ません。

「ルリ……、ちゃん」

もう一度、反芻するように呟きます。
それはそうでしょう。この時代の私が、あの時の私だと誰が思うでしょう。
幸福と希望を託したはずの者がこの場にいるなんて誰が、

「ルリ……、ちゃん」
「えっ……」

唐突に強く抱きしめられました。
心臓が跳ねます。

「セレナイト……さん?」

恐る恐る顔を上げます。
そこには涙を流す、まるで天使、女神のように美しいセレナイトさんの顔。

「そっか、……そうかぁ」

泣き笑いのような表情のままそう言って、私を抱きしめ続けます。
それに感化されるように、私の瞳からは自然と涙が溢れてきます。
その涙は、その微笑みは、まぎれもなく私を受け入れてくれた証しの涙なのです。

「こんなオレなんかを追って……、こんなオレなんかを想ってくれて……」

強く強く抱きしめてくれます。

「ルリちゃん……、ルリちゃん!」

それ以上は言葉にならないようです。

「あの……、怒っていませんか?」

反応は明らかに私を受け入れてくれたもの。
だけど確固とした言葉でそれが欲しかった。

「怒る? ……どうして?」
「セレナイトさんは……、私にあの世界で幸せになれって言いました。そして私を連れていかなかった。
なのに私はこうして約束を破って貴方を追って勝手にここに来てしまいました」

願いにも似た約束をたがえてしまったのだ。
怒られて当然。

「約束を破ったのはオレも同じだよ。家族だったルリちゃんを置いて、勝手な願いを押し付けて死を選んだ。
家族を幸せにすることをやめて、自分勝手に死を選んだのはオレなんだ。なのに君はそんなオレを求めてここまで来てくれた」

「………………」

「だからこっちが謝りこそすれ、君を怒る権利なんて何もないよ。……もう一度会えて、本当に嬉しいよ、ルリちゃん」

セレナイトさんが笑顔で言ってくれました。

「あ、あぁ……」

涙がまたまた溢れてきます。勢い良く溢れてきます。
やはり私の選択は間違っていなかったのです!

絶望的な状況から、泥水を啜るような覚悟でここまで這いずってきた甲斐はあったのです!

「アキト……、さん、……アキトさん!」

感極まって私は本来の名で、彼を呼びました。

「星野ルリは……、貴方の家族で! 貴方が大好きで! 貴方を心の底から愛しています!」
「……うん」

「……ラピスも、アキトが好き」
「うん、ありがとう、ラピス、オレもラピスが好きだよ」

「これからも貴方の家族でいさせて貰えますか? これからも貴方と一緒に……」
「もちろんだよ、ルリちゃん」

「それと、貴方を一人の男性として、……今は女性ですけど、それでも私は貴方を一人の男性として、家族という垣根を越えて愛しているのです。
その想いは……、受け入れてくれますか?」

さり気なく勢いで言いましたが、心臓はバクバクです。
家族としては認めてくれた。だけど一人の人間として、likeではなくloveの感情を抱く私を受け入れてくれるのか……。

「………………」

セレナイトさんは無言です。困ったような顔をしています。
私の心は冷や水を浴びせられたように凍りました。そんな顔をするということは……。

「ありがとうルリちゃん。こんなオレなんかにそんな気持ちを持ってくれて……。
その気持ちは本当に有り難いし、嬉しい」

その前振りは確実に相手を振る時の口上です。
い、いやです! そこから先は聞きたくありません!

「でもね、オレにはユリカがいるんだ。ユリカは最低なことをたくさんされて幸せになれずに死んでしまった。
オレはそんなアイツを差し置いて幸せになるつもりはないし、アイツ以上に誰かを愛することなんて出来ない」

「あっ、ぅ、も、もう、……もう良いです!」
「最後まで聞いてルリちゃん」
「………………」

「それでね、オレの最愛の伴侶がユリカなのは永遠に変わらない。それもこの世界のユリカじゃなくて、あの世界のユリカだ。
だからオレは永久に恋愛感情という意味で人を愛することは出来ないと想う。いや、絶対にしてはいけないんだ」

「………………」
耳を塞ぎたいです。だけど出来ません。

「でもだからと言ってそうやって操を立てることで他の人を不幸にすることをユリカは望まないと思う。
オレの心はユリカのもの。だけどそれを頑なに守って家族を不幸にするなんてユリカは絶対に望まない」

「…………そう、ですね」

その通りだと思う。

『アキト! いつまでもウジウジしたら駄目だよ! そんなのアキトらしくないよ!
アキトが私を好きなのは知ってるもん! だからそれで充分だよ! だからその力でもっとたくさんの人を助けなよ!
ルリちゃんだって幸せにしないと駄目なんだよ!? ラピスちゃんもね!』

ユリカさんならきっとこんな感じで言うと思う。
最後のは私の願望だけど。

「ユリカを守れなかったオレが幸せになるつもりはない。アイツ以外を愛するわけにはいかない。
だけど誰かを、仲間を、家族を幸せにすることを否定する気はない。それ自体が今のオレが生きている意味だから……」

「…………そ、それは、つまりどういう」

「だからね、オレは自分が幸せになったり誰かを愛したりはしたくないけどルリちゃん達には幸せになって欲しい。
だからこんなオレが必要だって言ってくれる限り、オレはいつまでもルリちゃんの傍にいるし、ラピスの傍にもいる。
君達を命を賭けて守るし、幸せにしてあげたいと思っている」

「………………」

「もし……、こんなオレでも良いなら、もう一度、君の家族にさせてくれないかな?
あの世界で一緒の時間を歩んだ君と、もう一度、家族になりたいんだ」


「………………」


胸が一杯になりました。
そうですよね。そんなことは分かっていたんです。
アキトさん、セレナイトさんがユリカさんを思う気持ちがどれほど強いものかなんて。
愛するがゆえに黒の王子と呼ばれる復讐の鬼になった人なんです。

そこに私が入る隙などない。なんてことは屋台を引いていた時から分かっていました。
ユリカさんが死んだからといって他の人に目移りするような人なら私だって好きにはなっていない。


だけどどうしても私は想いを遂げたかった。
だからこうしてアタックし、見事に撃沈した。

でも悔いはありません。心は妙に晴れやかです。

「分かりました。アキトさんが良ければ、もう一度、家族になって下さい」
「うん、もちろん。今度こそ家族として幸せに出来るよう、精一杯頑張るよ」

「はい、ではその手始めとして引き続きセックスしましょう」
「うん、そうだね。…………って、えっ?」

「アキトさんは私たちが幸せになるために命を賭けてくれると言いました。
そして私達の幸せとはアキトさんと結ばれることです。ですから私達とセックスして下さい」

「ちょ、な、なにを……」

「もちろんアキトさんが愛しているのはユリカさんですし、心の操を奪うつもりはありません。
ですが身体の操は関係ありません。私達はアキトさんの身体を貪れないといつまで経っても不幸なんです。
ですから私達の幸せを願うなら、私達にその身体を下さい」

「そ、そんな……」

「それともさっきの言葉は嘘だったんですか? 私達の幸せを願わないんですか?
私が、家族である私を捨てた貴方を追ってここまで来たことは迷惑だったんですか?」

「そ、そんなこと思ってないよ!」
「だったら迷ってないで抱かれて下さい!」
「ひぃ!」

杉下右京風に激昂した口調で私は言った。顔も震えています。
実のところ、腹が立ってるみたいです私。(笑)
頭で分かっていても心が分かっていないといか、感情をコントロール出来ないというか……。

なんかもう、イラっ☆ としています。
酷くアキトさんを困らせたい。虐めたいです。

「分かってくれましたね?」
「…………」
「返事は?」
「う、うん」
「うん、じゃないでしょう? はい、でしょう?」
「は、はい」
「よろしい、でははじめましょう」

私はそう言うと彼女の頬に手を、

「で、でもやっぱりこういうことは家族としたらいけないっていうか……。ルリちゃんもまだ子どもだしさ。
それにこんなことしなくてもオレはルリちゃん達を大切に想ってるし、それに今のオレは女だから」
「うるさい、黙れ」
「ごめんなさい」

さっきとは違う意味で涙目になってます。(笑)
セレナイトさん、カワユスw

「ではまずはキスからいきます」
「あっ……」

頬に手を添えると、セレナイトさんが恥ずかしそうに声を上げます。
なにせ私はこの時代のルリではなく、あの世界のルリなんです。
黒の王子時代のセレナイトさんを知ってるルリルリなんです。
羞恥心も倍増なはず。

チュ……

軽く触れるようなキス、ついばむようなキスです。
当初の緊張感はほとんどありません。
今の私は「怒りのアフガン」みたいな感じなので緊張のきの字もありません。

「うっ……」

ですが、セレナイトさんの顔は真っ赤です。
先ほどのように襲われたパニックはなく、真綿で首を絞めるような、自覚のある口付けなのです。
義妹、義娘のような私と、そういうことをするのは恥ずかしいはずです。

ですがそんな事情は関係ありません。
むしろそういった背景は私にとってご馳走です。

「アキトさん……、いえ、セレナイトさん、私は……貴方を一人の人間として愛してます」
「あ……、ぅ」

面と向かって言われて、セレナイトさんは恥ずかしそうに目を逸らします。
クククク……。

「例え想い人としての愛は得られなくても、家族としての愛だけで構いません。
それでも私は貴方のことを愛しています」

「そ、そんな……、で、でも……」

ククククク……。

「大好きです。愛してます」
「わ、分かったから……。もう、分かったから」

クックックックック……。

「で、でもやっぱりこういうことは」
「セレナイトさん?」
「は、はい……」

セレナイトさんの頬を、耳を撫でながらもう一度キスを……。
今度はラピスさんと練習したときみたいにディープなやつを……。

チュ……、と軽く唇を触れさせ、そのあとに舌をセレナイトさんの唇の間に。
歯を撫でるように、ノックするように舌で舐めます。
と、同時にセレナイトさんの頬を、耳を撫でていた手で、その頭を傾けます。

するとどうでしょう! あんなに頑に閉じていた上の歯と下の歯が、徐々に隙間を作っていくではないですか!
その隙間を縫うように、舌を侵入させます。そしてセレナイトさんの舌と私の舌を絡ませます。

なんということでしょう!
ディープキスの完成です!

「あ、んっ……、んんっ」

くぐもった声でセレナイトさんが応えてくれます。
押し返すわけにもいかず、かと言って絡ませるわけにもいかず、
私の舌の動きに何も反応出来ません。舌マグロです。

ですが、動きこそマグロでも感覚はマグロではなく、
むしろ敏感ですから感じてくれているのが手に取るように分かります。

あぁ……、それにしてもセレナイトさんの唾液はどうしてこんなに甘いのでしょう。
マシンチャイルドとしての遺伝子操作のなせる技なのでしょうか……。
いつまでも貪っていたい美味しさ、舌の柔らかさです。

「んっ……、んんっ……」

さらにこうして漏れ聞こえる声の愛らしさ。
人格そのものの素晴らしさ、私達を思う優しさ。

もう全てが完璧過ぎます。

そんな完璧なセレナイトさんと私はいまキスをしているのです。
全人類の憧れ、かつては黒の王子、今は月光の戦乙女と言われたセレナイトさんとキスを……。
優越感大爆発です。

「ルリばっかりズルイ、ラピスもお姉ちゃんとキスしたい」

頬を膨らませてラピスさんが言いました。

「んはぁ……、分かりました。お譲りします」

私はセレナイトさんとのキスをやめ、すっと場所をあけました。
この程度のことはこれからいくらでも出来ます。そして私とラピスさんは立場的に同列なのです。
私と同じ気持ち良さを分かちあわないといけないのです。

「ら、ラピス、落ち着いて。こういうことは家族でするものじゃないんだ。
ラピスがもっと大人になって、好きな人が出来たら」

「ラピスが好きなのはアキトだけ。他の誰かは好きにならない。絶対に……。絶対に」

はい、二回言いました。
それだけ重要だということです。

「で、でも大人になれば考えも変わると思う。今はオレしかいないからそう思うだけで。
もちろんこんなことをしなくてもオレ達は家族だし、いつまでもオレはラピスの傍に、んぅ!?」

はい、残念でしたwww
ラピスさんがセレナイトさんの頭をホールドして「ラピス・ラズリ」の発動です。

ズチュルルル! ズチュルルル!

「んぅぅ! んっ、んんっ! んぅぅ!」

セレナイトさんが酷く痙攣しています。
私はどちらかというと精神的な快楽を重視しています。
セレナイトさんとの思い出、その思い出からくる感情の変化をスパイスとして肉体的快楽を味わう。
つまりはセレナイトさんの心をおかずに肉体という主食を貪るという感じでしょうか。

逆にラピスさんはお米だけでいけるクチ。お好み焼きでお米が食べられる関西人気質のようです。
ですから酷いことになっています。

やりたい盛りの高校生が二十歳前後の女子大生のお姉さんに「好きにして良いよ?」と言われた時のガチンコセックスのようなものです。

ズチュルルル! ズチュルルル!

「むぐぅぅ! んんっ、んんぅ!」

セレナイトさんも必死にラピスさんを引き離そうとしますが、あまり強くは離せません。
そして何よりもラピスさんの口撃は尋常じゃない。……なすがままです。
とても一桁の歳の子のキスじゃありません。

あれは脂の乗った三十代後半の男性の相手を落とそうとするキスです。
私もあれを喰らった時のことを思い出して、少し興奮してきました。
それにこのままいつまでもラピスさんに任せてしまうと、セレナイトさんの体力が持ちませんし、
何よりも私が退屈、辛抱たまりません。まだ軽いキスしかしてないですし……。(笑)


「ラピスさん……、私も混ざっても良いですか?」

私とラピスさん、そしてセレナイトさんを入れた三人でキスをしましょう。
そう提案しました。

「……分かった」

ラピスさんは快く頷いてくれました。

「ん……、ぁ、……ま、待ってふたり、とも……、落ちついて……、こんなこと、本当に」
「セレナイトさん、舌を出して下さい」
「だ、だからっ、もっと冷静に」
「セレナイトさん、私は舌を出せと言ってるんです。声は出さなくて良いです」
「……うぅ、酷い」
「お姉ちゃん、早く」
「……ラピスまで」

心の底から困惑しているようです。(笑)
黒の王子の、月光の戦乙女のこんな表情、他の誰も見ていないでしょう。
こんな表情をさせることが出来るのは私達だけなんです!

「セレナイトさん……」
「わ、分かったよ」

涙目で、諦めたようにそう言うと、セレナイトさんは恐る恐ると舌を出しました。
美味しそうな舌です。

私達は子犬、子猫のようにセレナイトさんの口元に近づき、その舌を舐めました。

ペチャペチャ……、ネチャネチャ……、

三人の舌を通して唾液交換が行われます。
マシンチャイルド三人のキス、レズビアン的な行為です。
見る人が見たらかなり美味しい光景だと思います。
もちろん私自身も美味しいです。

「セレナイトさんの舌、美味しいです」
「お姉ちゃぁん」
「ん……、ぅぅ」

顔を真っ赤にしています。
自分の子どもみたいに思っていた者に、キスを強要される。
親が子どもの前で性生活を見せるような恥ずかしさに違いありません。

そんな恥ずかしさを更に倍加させるため、
私は無防備になっているセレナイトさんの乳房を触り始めました。
舌を絡めながら、空いている手でセレナイトさんの胸を触ります。

「んっ……」

セレナイトさんが抵抗するように私の手を押さえたので、オイタを叱るお母さんのように、その手を、ピシャリ! と叩きました。

「うぅ……」

哀しそうに手を引いて、セレナイトさんは動きを止めます。(笑)
さえぎるものがなくなったので、私は柔らかなお宝目指して手を伸ばします。


フニュウ……、張りがありながらも、吸い付くような柔らかさを持つ乳房。
その先端は薄い色素で淡く色づいています。

「んっ……」

セレナイトさんが声を上げます。
キスの刺激と胸への刺激……、大変でしょうね。
それを理解したうえで、私はさらに胸全体を揉み込んで堪能しながら、今度は指先で淡く色づく乳輪部分をクルクルっと円を描くようになぞります。

「あ、んぅ……、んっ」

ピクン、ピクン……、セレナイトさんの身体が痙攣します。
構わずに乳輪を虐めつつ、たまにその先端の頂きをツン! と指で弾きます。

「あんっ!」

思わず強めの声を上げてしまうセレナイトさん。
キスの音だけが聞こえている静かな室内で、その声は大きく響きました。
そしてセレナイトさんはみるみるうちに顔を赤く、首筋まで、耳すらも赤くしてしまいました。

「ふふふ……、可愛いですよ、アキトさん?」
「………………」

あえてその名で呼びました。
あのアキトさんが女の子女の子した声で「あんっ!」って言ったんですよ?
あのアキトさんが女の子女の子した声で「あんっ!」と言ってしまったんですよ?

そりゃ恥ずかしいですわ。

「アキトぉ……」

ラピスさんもキスをしながら、私の真似をしてもう一方の胸を虐めはじめました。
キスは上手ですが、愛撫はそこまででもないようで、ただただ柔らかさという快を貪るように胸を揉んでいます。

「んっ……、んんぅ」

眉根を寄せながらそれに耐えるセレナイトさん。
ですが耐えようとしても、キスをしている状態ではあまり功を奏しません。
「歯を食い縛って耐える」という言葉からも分かる通り、耐えるという行為は噛むという行為と密接に関わっているのです。
それを封じられたままでは、忍耐を貫くのは並大抵のことではありません。

むしろ力を入れようとすることで快感が強まってしまいます。

「んっ、んんっ、……んぅ」

二人がかりでのキス、胸への愛撫に哀しげにも聞こえる嬌声で耐えるセレナイトさん。
階段を上るように、徐々に声が上擦り始めています。

「も、もうっ、これ以上は……」

ついに耐えられなくなったセレナイトさんは、キスを強制的にやめて、私達の愛撫も振り払って立ち上がりました。
さすがに絶頂する姿を、娘達に見せたくはないと思ったのでしょう。

「きょ、今日のことは忘れるし、怒ったりもしないから。それにルリちゃんとラピスは大切な家族で、オレが命を賭けて守ることも誓うから、だからこれ以上は」

そう言ってよろめきながら部屋を出ようとします。
ですがそうはさせません。

「てやっ!」

私はセレナイトさんの腰にタックルを喰らわせます。

「わぁぁ!」

そのままズルズル押して、ベッドの上に倒しました。
先ほどまで辛うじて下半身を守っていたバスタオルは道半ばで落ち、
ベッド上のセレナイトさんは全裸。……女神という名に相応しいお姿です。

「あっ……」

さすがに恥ずかしいようで、すぐに局部や胸を腕で隠しました。
その行動、カワユスw

「ラピスさん、セレナイトさんを押さえておいて下さい」
「ラジャー」

ラピスさんはそう言うと、ベッドにいるセレナイトさんに抱きついていきました。

「ら、ラピス」

大事なところを隠している状態ですし、絶頂の間際にあった身体は思うように動かないので、
大した抵抗も出来ずにラピスさんを受け入れる羽目になっています。
しかしラピスさんの方も抱きつくぐらいで、それ以上のことはしていません。
むしろ全身でセレナイトさんの柔肌、体温を感じているだけのような……。
もちろんそれだけで天国のように気持ちいいのだと思いますが。

ですが実を言うと私達、キスや胸への愛撫ぐらいしかまともに出来ないのです。
予行演習としてラピスさんとした練習も、キスや胸への愛撫がメイン。
キスこそ上手く出来ましたが、胸への愛撫は私達の身体がまだ未発達なせいで快感というよりもくすぐったさの方が強いもの。
そして性器への愛撫も、多少の気持ちよさはあるものの、やはりくすぐったさの方が強い。
さらに性交、膣に棒状のモノを入れるなんて恐ろしくて出来ませんでした。指ですらお互い恐れ慄いたほどです。

ですからここから先のプランはあまりにも脆弱なもの。
ただの童貞野郎なのです。

ですが、そんな中で唯一の希望が……。
そうです。バイブです。特に電動マッサージ器、電マと呼ばれている最強の宝具が私達の希望。
性感が未発達であるはずの私達でさえ、この電マを局部に長時間当てるとそれなりの到達点にのぼりつめることが出来ました。
ということは勢いで今は多少の快感は与えられていますが、最高潮の絶頂にセレナイトさんをいざなうのに電マは必須ということになります。

それに自分達に指を入れるのでさえ、怖かったのですから、セレナイトさんに指を入れるわけにはいけません。
ですから性器周辺への強烈な刺激を与えて、セレナイトさんを満足させないといけないのです。
そんなテクニックは残念ながら今の私達にはありませんので、道具に頼らざるをえません。


ヴィィィィン!


ということで私は隠していた電マを取り出します。
開発された時からこれが究極の形状だったのでしょう。
灰色の円筒部分と白い取っ手部分というオーソドックスな電マです。
本来は筋肉のコリをほぐすのに使う、至極まっとうな商品なのに自宅にこれがあるだけでスケベの烙印を押されてしまう哀しき器具です。

「はぁ、はぁ、る、ルリちゃん……、ま、まさか」

ラピスさんに抱擁という拘束をされているセレナイトさんが、電マの音に気付きました。

「はい、そのまさかです。(ニヤリ)」

私は邪悪に嗤って応じました。

「あ、い、いや……」

さすがに性的な経験が豊富なセレナイトさんは、その器具がどういう刺激を与えるか分かっているのでしょう。
顔を青ざめさせています。

無理やりにでもラピスさんの拘束を解いて、立ち上がろうとしています。

「ふふふ……、無駄ですよ、セレナイトさん」
「い、いや……、落ち着いて、ルリちゃん」

か弱い子ウサギのように震えています。
なんとかベッドの上で立ち上がり、壁に手をつきながら歩こうとします。

「アキト……、だめ」

でもラピスさんがその足に寄生虫のようにしがみ付いています。
獲物を捕食しようとしているようで怖い、というか厭らしいです。

「あ、あ……、あっ」

ヴィィィィィィン!

「うふふふふふ」

煽り立てるように、大山的ドラえもん声で私は接近します。
すでに目と鼻の先、手を伸ばせば電マをセレナイトさんの股間に押し当てられます。

「ま、待ってルリちゃん、それは……、そ、れは……」

涙目になって首を振るセレナイトさん。
それだけこれが恐ろしいのでしょう。私がにじり寄るたびに後ずさっています。
ですがすぐ後ろは壁です。絶対絶命です。

「安心して下さいセレナイトさん、ちゃんと気持ち良くしてあげますから」
「べ、べつにそんなこと」

ついに向かい合いました。
セレナイトさんは壁に張り付いたまま、私が持つ電マを押さえようとします。
だけどそうはさせません。その手を掴み、指と指を絡ませるように優しく手を繋ぎます。
それはつまり精神的な拘束です。

片方の手をこうして柔らかく掴むことで、もう片方が自由であっても強い拒絶が出来ないようにするのです。

ヴィィィィィン!

「では、気持ち良くなりましょう? セレナイトさん」

私は怯えさせないように優しく微笑んで、電マを股間に押し付けました。

ヌ、ヴゥゥゥゥン……、

「んっ、はっ、ぁ、ぁぁぁぁ」

股間に電マが触れた瞬間、ビクンと身体を痙攣させて声を漏らすセレナイトさん。
その声はとても甘く、それが恥ずかしいのか片方の手ですかさず口を押さえます。
ですがそうなると股間に当てられた電マを防ぐ手立てはもうありません。ただただ受け入れ、耐えるだけになってしまいます。

「気持ち良いですか? セレナイトさん?」
「ぁっ、ぁぁ、……き、気持ち良くなんか……、んんっ」

艶のある声を震わせながら言います。
だけど嘘だとすぐに分かります。
ただでさえ感じやすいセレナイトさんの身体です。
さらに性器に直接、電マを当てているのです。

その強固な精神力を持ってしても耐えられるものではないのでしょう。

「あぁ……、や、やめ、て……、やめて、くれ……、ルリちゃん」

涙を瞳に溜めて、頬を上気させ、愛欲に抗おうとする苦悶の表情で私に懇願します。
それは私にとってのご褒美以外の何物でもないのに……。

取り合えず、返事代わりに電マの強さを上げました。

ヌヴゥゥゥン!

「くっ、ぅぅぅぅぅん!」

子犬のような声で反応するセレナイトさん。
目を強く瞑って快感に震えます。瞳に溜まった涙が目尻からこぼれています。

「あっ……、あっ、……ひ、ひどい、ひどいよぉ……、ルリちゃん」

私と繋いでる手が強く握られます。恋人とに対する愛情ある行為のように……。
もちろん応じるように絡めた手を握り返します。

「可愛いですよ? アキトさん……」

私は優しい声で言いました。

「んっ……、ぅぅ……、せ、せめて、その名前で、呼ぶのは……、ん、んんぅ」
「どうしてですか? アキトさん」

あえて呼び続けます。(笑)

「君の知っている天河アキトは死んだ。確かにそうなのかもしれませんね。
だってあのアキトさんがこんな可愛い姿で、そんな可愛い声を出すんですから……」

「うぅ! んっ、ぁっ、ぁぁ」

ただでさえ赤いセレナイトさんの表情がますます赤くなりました。
黒いバイザーにマント姿の王子様が、今や美しい女神のような美少女になって子どもに虐められているんです。
劇場版屈指の名シーンもこうなっては台無しです。

「アキトぉ……、可愛いよぉ」

足にしがみ付いているラピスさんがうっとりするようにそう言って、セレナイトさんの太ももを撫でます。

「んんっ! ら、ラピスぅ……」
「お尻も可愛いよぉ」

蜜に吸い寄せられる蝶のように、ひらひらと手を臀部に添えて撫でます。
さらにそのみずみずしい肌に舌を這わせます。

「や、やめ……、んんぅ」
「美味しい……、アキトぉ、美味しいよぉ」

太もも、お尻を触りながら、さらにその周辺を嘗め回すラピスさん。
伝家の宝刀「ラピス・ラズリ」を持つラピスさんの舌技というのは凄いものです。

前門の電マ、後門のラピス……、絶対絶命です。
しかもラピスさんが後方のほぼ真下に鎮座したために、座り込むことも、逃げることも出来なくなったセレナイトさん。
二つの攻撃を立ったまま耐え続けないといけなくなりました。

しかも片方の手は私と繋いでいますし、足も間にラピスさんがいるために半開きの状態。
快感に堪えるには酷な状態です。

力の入れようがないのですから……。

ヴゥゥゥゥン……、ピチャピチャ、ピチャピチャ……、モミモミ、サワサワ……、

三つの攻撃を無防備な状態で耐えるしかないのです。

「あっ……、ん、ぅぅ……、だめ……、だめだ……、んぅ、……このまま、じゃ……、おかしく、なる……ぁっ!」
「イッちゃうんですか?」
「……ぁっ……、ん、んんっ(フルフル! フルフル!)」

首を振って否定しました。
ですが口を押さえたままの必死の表情。
反論する言葉すら出せない。言葉を出そうものなら嬌声が先に……、という状態。

ヴゥゥゥゥン……、

私は性器に当てている電マを、さまざまな位置に、ゆっくりと移動させながら反応を窺います。
あのセレナイトさんが私達の手によって響くように反応してくれる。……性的な反応を。
嬉しくて仕方ありません。

「ぁ、ぁぁっ……、ぁぁ……、ぁ、……ぁぁっ」

もはや私達の声にも反応出来ない。
ただ迫りくる快感を受容し、官能に声を漏らしているだけ。

「ぁ、ぁぁっ……、ぁ」

唐突にセレナイトさんの声が高くなりました。
ほんの一瞬だけ。

だけどそれとともに別の反応が……。

プシュ、プシュゥゥゥ!

なんと性器から体液が吹き出してきたのです!

「ぅ、ぅぅ! ぅぅぅ!」

セレナイトさんは目を瞑って硬直しています。
声を出さないように頑張っています。(もちろん漏れてきているのですが)

これはどうやら俗にいう潮吹きというやつですね。
女性が激しい快感の果てに激しい絶頂にさらされた時に発生する現象です。
見た感じ、絶頂に至っているようには見えなかったのですが、どうやらそんな姿を見せたくないと、耐えていたようです。

可愛いですね。(笑)

「……アキトさん? ……イッちゃいました? クスクスクス……」

私は一旦、電マのスイッチを切って尋ねました。

「ん、ぅ、……ぅ(フルフル、フルフル)」

セレナイトさんは顔を赤らめたまま、首を横に振ります。

「そうですか……。でもこれって……、潮吹きってやつですよね?」
「…………(フルフル、フルフル)」

涙目になって、無言で否定するセレナイトさん。

「だったらこれは何なんですか?」
「…………し、しらない」
「お漏らししたんですか?」
「…………ちが、う」
「だったら何なんですか?」

私は子どもに尋ねる母親のような口調で聞きます。

「………………」

セレナイトさんはそんな私に何一つ反論出来ません。
だってこれ、潮吹きだから。(笑)

「そうですか、言ってくれないんですか。じゃあまだ続けますね。……正直にイッたら終わりにしますから」

私は電マのスイッチを再び入れました。

「ぁっ……、そん、……な」

哀しそうな声が聞こえましたが、無視します。
すぐに電マを性器に押し付けました。

「あっ……、ま、まだ、やめ……、んんぅ!」

可愛い声の再生開始です。(笑)

「あぁ……、も、もう、だめだぁ……、これ、いじょうは……」

虚ろな様子で呟きます。

「ラピス……、どけて……、も、もう、立ってられない……から」
「………………(ペチャペチャ、ペチャペチャ)」

聞いちゃいません。
ひたすらお尻を舐めています。

「ルリちゃん……、もうやめて……、もう……」

今度は私に標的を変えました。

「じゃあ正直にイッたと言って下さい。私は大切な家族であるルリとラピスの前で、その家族の手でイカされて潮を吹いてしまったじゃなイカ? ……と」
「そ、そんなこと、言えるわけ……」
「だったらこのまま続けますでゲソ」
「そ、そんな……」

強く押し付けました。

「くっ、ぅぅ!」

一瞬、鋭く痙攣して電マを受け入れるセレナイトさん。
膝をガクガクと震わせながら刺激に耐えます。

「ぅぅ……、ぅ、ぅぅ」

ですがもう限界だったようで、静かに崩れ落ちます。
なんとかラピスさんを踏まないように前に、すなわち前方にいる私に寄りかかるように倒れてきました。

「大丈夫ですか? アキトさん?」

私は標的を失った電マを一旦捨てて、セレナイトさんを支えながらゆっくりと横たえてあげます。
ラピスさんは狙いやすくなったと言わんばかりにお尻やアソコを舐めまわしています。
まるで餌に群がる養殖ウナギのような貪欲さです。

「ラピスぅ……、ルリちゃん……、もう、許して……」

蕩けるような、涙に濡れた表情で懇願してきます。
ですが抵抗する力はないみたいです。

もちろん私達にやめる気はありません。
この想いを浄化するにはこんなものでは足りないからです。


「今日は私達の想いを遂げる日なんです。諦めてこの想いを受け止めて下さい」

横たわっているセレナイトさんにそう言うと、再び電マを股間にあてがいます。

「あっ! あぁっ!」

ちょうどクリトリスに当たったみたいで、セレナイトさんの身体が跳ねます。

「………………」
ペチャペチャ、ペロペロ、レロレロ、スチュルルル!

さらにラピスさんの口撃も加わっています。
巧く両足を開かせ、股間に潜り込み、性器や、そこから滴る愛液を愛飲しています。
ラピスさんは本当にセレナイトさんという存在が発するモノが大好きなんですね。

なんだか微笑ましいです。


「あっ、だめ! だめぇ! またイク! イッちゃう! ……ぁあ!」

プシュウ!

クリトリスに押し付けられた電マとラピスさんのクンニにあえなく撃沈するセレナイトさん。
再度、勢い良く潮を吹きました。

「んっ! んっ! んんん!」

腰がビクンビクンと脈打つように痙攣し、それにあわせるように性器から体液が噴き出します。

「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ」

ラピスさんはそれを一滴残らず飲み干そうと必死です。

「や、やめ、っ! ぅぅ! の、のむな! ら、ラピス! んぅ!」

絶頂の快感に震えながらも必死に声を絞り出すセレナイトさん。
恥ずかしい体液を娘のような子に貪られるというのが耐えられないほど恥ずかしいんでしょうね。
その姿が可愛いので電マを更に強くクリトリスに押し付け、振動の強さを上げました。

「ひぃぅ! ぅっ、ぁぁぁぁ!」

歯を食い縛るようにしながら搾り出していた声が一気に甲高くなり、それにあわせるように身体も痙攣し、またまた潮が強く吹き出します。

「ひ、人をもてあそんでぇ! くっ、くぅぅぅぅ!」

瞳に涙を浮かべて私を睨んできます。
とても可愛いです。

「ごめんなさいアキトさん。……アキトさんが可愛すぎて仕方ないんです。
アキトさんが好きすぎて仕方ないんです」

私はそう言うとセレナイトさんにキスをしました。

「る、ルリちゃんっ、んぅっ……」

抵抗も出来ずに受け入れてくれます。
そしてやはりセレナイトさんの唇は柔らかくて甘くて……。

絶頂の痙攣が収まるまで私はセレナイトさんとのキスを楽しみました。

「アキトさん……、それといま、自分でイクって言っちゃいましたよね。……ふふふ」

もはや息もたえだえのセレナイトさんに言います。

「……あ、……ぅぅ」

その事実に気付いて悔しそうな表情を浮かべます。
それがまたカワユイ!

「あぁ、 素敵ですアキトさん! 貴方の全てが大好きです!」

そう言うと私は覆いかぶさるようにセレナイトさんに抱きついて、そしてキスをしようと……。

「ルリ、ちゃん……」

だけどそれをセレナイトさんが抑えて制止しました。

「えっ……」

私の顔を押さえてキスを止めます。
一瞬、ズキリと胸が痛みました。
それは拒絶の証……。

さすがに怒ってしまったのでしょうか……。
その事実は私の心に恐怖と恐慌の種を蒔いて……。


しかし、ここで驚くべき事態が!


「ルリちゃん」
「えっ? ……んぅ!」

一転、セレナイトさんの方からキスをしてきました!
私の頭はすぐに真っ白に!

愛情を注ぎ込むような恋人同士のようなキス。
それをセレナイトさんの方からしてきたのです。

今までのこちらからの一方的なキスではありません。
想い人であるセレナイトさんの方からしてくれたキス。
気持ち良さは今までの比ではありません!

「あっ……あっ……」

私は呆然とセレナイトさんを見ました。
ラピスさんも驚いて口撃をやめてしまっています。

「あっ……、あのっ!」
「……もう、降参したよ」

快感の余韻に濡れた瞳、そこから僅かに覗く慈愛の色……。

「二人の気持ちはもう、分かったから」

そう言いながらもう一度、私にキスをしてくれました。

「んぁ……」

はぁ……、心が溶けてしまいそうです。
唇からセレナイトさんの優しさ、温かさが……。

「ラピスもおいで?」

私とのキスをやめたセレナイトさんが今度はラピスさんに言いました。

「う、うん……」

少しの戸惑いを見せながらラピスさんは頷きます。
そしてゆっくりとセレナイトさんのもとへ……。

「あ、アキト……」
「ラピス、キスはあんなに激しくやらなくても良いんだ。相手を想う気持ちがあればそれで充分。
気持ち良くさせようとするんじゃなくて、気持ちを伝えれば良いんだ」

セレナイトさんはそう言うと、ラピスさんの頭を撫でながら微笑んで、口付けを……。

「あ、アキトぉ……」

自身に舞い降りる幸福にラピスさんは夢見心地の表情。

「ラピス、大好きだよ」
「あっ、ん、んぅ」


二人の唇が接触しました。
仲睦ましいマシンチャイルド姉妹のキス。
とても耽美で美しい光景です。

それにセレナイトさんに「大好きだよ」って言って貰えるなんて……。
私にはまだ……。

「あ、アキトさん……」
「ふふふ、分かってるよ」

ラピスさんとのキスを終えたセレナイトさん。
私の呼びかけで察してくれました。
ラピスさんは夢心地の表情。意識がどこか別のところへ旅立っています。

「ルリちゃん……、大好きだよ」
「あ、ぅぅ……」

顔が急激に熱くなりました。
心臓がハードロックでダンサブルな状態に……。
さらに頭を撫でられ、頬を触られ……。

「あっ……、んぅ」

唇が接触して、幸せがあふれ出してきて……。
私は今、天国にいるのでしょうか?

「んっ……、んっ」
「んっ、……んんぅ」

お互いの唇が接触しています。
唾液の交換や舌の出し入れなどはなく、ただただ優しいキスだけ。
それなのにこんなに気持ち良いなんて。

「……これで良いかい?」
「は、はいぃ」

何とかそれだけ言えました。
そんな私を見て、大人の余裕を感じさせるような微笑を浮かべるセレナイトさん。

「二人とも……、こんなオレなんかでも良いなら好きにするといい。
オレも二人の気持ちに応えられるように頑張るよ。ユリカもきっと二人の幸せを願ってくれてるだろうしさ」

「あ、アキトさん……」
「アキト……」

「だけどこういうことは順序を考えてやっていこう? ほら、キスだけでもお互いの気持ちがこもっていれば凄く温かくて、気持ち良かっただろ?」

「は、はい……」
「(コクっ)」

「だからさ、まずはキスから。これからは二人が望む時は抵抗しないで受け入れるから……。だから無理やり押さえつけたりしないこと」

セレナイトさんはそう言うと私とラピスさんの頭を撫でました。
もういつ死んでも良いというぐらいに幸せです。

「分かったかい?」

「は、はい」
「うん」

素敵な笑顔を浮かべて言われたら首を横に触れるはずありません。

「ふふふ、ありがとう」

そう言ってセレナイトさんは私達に再度、キスをしてくれました。

「あ、あぁ……」
「…………(ぽわぁ)」

「じゃあ今日はもうやめにしよう? 二人に色々と虐められて身体が汚れちゃったから、もう一度お風呂に入ってくるよ」

セレナイトさんはそう言うと、まだ快感の余韻残る身体に眉根を顰めながらもゆっくりと立ち上がり、ベッドを降ります。
そのまま浴室へと……。

「あ、ルリちゃん……?」
「は、はいっ」

立ち止まって私を見ました。
そして、


「また会えて嬉しいよルリちゃん。君はオレの世界の……、オレとユリカの大切な娘だ。……今度こそ君を幸せに出来るよう頑張るから」


「もう二度と信頼を裏切ったりしない。いま君の目の前にいるのは姿こそ違うけど君の知っている天河アキトだ」


「もう自分を捨てることはしない。もう君を一人にはしない。もう絶対に悲しい想いはさせない」


「ルリちゃん……、今度こそ、君を……」


そう言って私を抱きしめてくれました。


「あ、あぁ……、ぁ……」


私の涙腺は馬鹿になってしまいました。
涙がとめどなく溢れてきます。

大好きだった人に捨てられて、自身の未来に、命に何の価値も見いだせなくて……。
大切なモノを捨ててでも、縋るような思いでわずかな可能性に賭けて、


そして私は再び何よりも望んだ幸福を再び掴むことが出来ました。


「それじゃあ、お風呂に入ってくるから」

セレナイトさんが浴室に消えていきました。

「大丈夫? ルリ?」
「う、うぅ……、は、はい、大丈夫です」

ラピスさんが私の背中を撫でてくれています。

「よ、良かったですね、ラピスさん、私達の想い、アキトさんに通じました」
「……うん」

「これでもう、アキトさんと心を通わせることが出来ます。触れ合うことが出来ます」
「……うん」

「……でも、アキトはキスだけだって言ってた。ラピスはキスだけでも良いけど」
「そうですね」

セレナイトさんは取り合えずキスからだって言いました。
キスだったらこれからいつでもしてくれる。望めばセレナイトさんの方からもしてくれる。
そう言ってくれました。

「ですが……、アキトさんの反応、可愛くなかったですか? 電マを当てられて鳴いたとき、ラピスさんのキスで感じてしまって身体を痙攣させたとき、
それらの快感に耐えられずに唇を噛みながらもイってしまったとき」
「…………正直、勃起した」

使い方、間違ってますよラピスさん。

「アキトさんは私達を認めてくれました。こんな事をした私達を、その上でも認めてくれたんです。
だったらまた同じ事をしてもきっと認めてくれると思います」

「っ!?」

ラピスさんの目がギョロつきました。

「今度はアキトさんの口から感じるところを言わせたり、おねだりさせたり、……ら、らめぇ! とか言わせたくないですか?
他にも色々なプレイを……」

「kwsk」

「自分から、くぱぁ、ってさせたり、艦内を裸で歩かせたり、バイブをたくさんつけさせたまま仕事をさせたり」
「…………(鼻血)」

「アキトさんは私達の愛情溢れる悪ノリをきっと許してくれます。ですから……」

私はそう言うと再び電マを手に持ちました。

「ルリ……、行こう(キリッ!)」

ラピスさんも勇者の表情を浮かべています。

「ククククク……」
「…………(ニヤリ)」


私達は静かに愛すべき生贄のもとに向かいました。


『ユーゲットバーニン♪』


浴室からシャワーの音と歌声が聞こえてきます。
まるでホラー映画で最初に殺される女性キャラのようです。


「では、行きましょう(ニヤリ)」
「……うん(ニヤリ」


私達は浴室のドアに手をかけました。


『夢中になった日々がぁ〜、夢のかけらさ、っ、わぁ! ルリちゃん、ラピス! な、なに! ……ひっ、そ、それは! ……ちょ、ちょっと待って! なんで! まずはキスからって!
あ、やっ、だ、だめ! 無理やり押さえつけるのも駄目って! ……んぁ! そ、そんなとこにシャワー当てないで! ら、ラピスもそこ触ったら、んっ……、』


『も、もうっ、全然分かってくれてないじゃないかぁぁぁぁぁぁ! ……あん!』






皆さん、



私、いま……、幸せです!






短編3 完



















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