「そういうわけでご退院早々申し訳ないのですが、どうか宜しくお願いしたいと……」
「はぁ、……分かりました」
「ありがとうございます。やはり今回の件は他の方ではなかなか難しく、貴方以外に彼を連れ戻せる人はいないと思いますので」
「……そうですね」
納得したように頷く。
「では宜しくお願いします。彼の居場所はお渡しした資料に入っておりますので」
「はい」
「いやぁ、助かります。やはり貴方が居てくれるとナデシコは百人力ですね!」
満足したようにプロスペクターはそう言って、満面の笑みを浮かべたまま消えていった。
「………………」
その姿を無言で見送るセレナイト。
手には先ほど渡された資料があった。
『天河アキト失踪事件における捜査ファイル』
そう書いてある。
「……まったく」
呆れたように呟く。
「オレが落ち込んで失踪するならまだしも、なんでアイツが消えるんだよ」
ルリ達の救出作戦によって無事にクリムゾンの研究所から救出されたアキトとセレナ。
ともに衰弱が著しかったのですぐに入院、特にセレナは性的暴行を受けていたためにそれなりに重篤。
アキトは疲労による衰弱と多少の暴行による負傷で彼女に比べれば軽いモノ。……だが精神的には相当の傷を負ったらしい。
救出され、入院してから4日後、病室から忽然と姿を消していた。
『ごめんなさいセレナイトさん』
その書き置きだけを残して……。
(やはり師と仰ぐ女を自身の失態が原因で無惨に犯されるというのは堪えられない苦痛なんだろうな……)
自分もかつて同じような状況に遭遇したことがある。
発狂しそうなほどの怒り、屈辱が心を蝕む。……しかし決して狂うことは出来ない。
狂って楽になることは出来ない。
復讐を成就するためには……。
だが今のアキトには復讐すべき相手はいない。
ならばその想いを一体どこに向ければいいのだろう。
不甲斐ない自分だけが残った状況で何を想えば良いのだろう。
アキトはいま、罪の意識に苛まれるだけの咎人の心境なのだ。
「それを救えるのは、私だけ……、か」
その咎の原因となっている自分が、彼を唯一救える人物なのである。
「佐世保……、サイゾーさんのところか?」
資料を読む。
「……いや」
そうではない。
ここは……。
「あの馬鹿、……世捨て人にでもなったつもりか」
添付された写真に写るのは、数人のホームレスが集う場所で、ボロを身に纏い虚空を見つめるアキトの姿だった。
「はぁ、アイツらしいというか何と言うか……。まあ、オレらしいとも言うんだろうけど」
セレナイトは溜息をつきながらそう言うと、自身の部屋に向かうために歩き出した。
「……………………」
空を見ていた。
ただただ青い空を……。
視線を下げると道を歩く人が見える。
様々な目的を持って歩く人々が見える。
若い男、中年の女、中年の男、杖をついて歩く老人……、
老若男女がそれぞれに目的を持って歩いている。
「……………………」
だがアキトには何も目的がなかった。
ただただ罪だけが彼の手にはあった。
「……………………」
一体何日こうして空を見ているのだろう。
空腹に耐えているのだろう。
本来ならまだ入院していなければならない身体なのに、なぜこんなことを……。
いや、それこそが罰なのだ。
尊敬る人を、愛する人を守れなかった自分に課せられた罰なのだ。
自分はもうこのまま静かに衰弱していき、死を迎えるしかない。
それが自分に課せられた唯一の使命、終末の迎え方。
すでに手元には一銭もお金はない。
怪しまれないようにと服装はいつものモノに代え、遠くに行くためにとお金も持った。
そしてここ横須賀に来た段階でそれらも無用の長物。
タイミング良く因縁をつけられて、蹴られ殴られた後に金は奪われた。
むしろそのお陰でライフラインは完全に絶てた。
それに痛みは自分に罰を与えてくれる。……殴られるたびに笑みがこぼれてきたほど。
相手は気味悪がって金を奪ってとっとと逃げ出していったが……。
「………………」
視界は広く、思考もクリア、しかし体調はどん底に近づいている。
あと数日もすれば自分は最低限の罪を償うことが出来るようになる。
今のアキトはただその時が来るのを待ちわびるだけだった。
「ごめんなさい、セレナイトさん」
この言葉を呟きながら、彼女に対して精一杯のお詫びの気持ちを持ったまま死ぬことが、
「そういうのはちゃんと本人に向かって言うべきだと思うぞ?」
「…………えっ?」
聞きなれた声がした。
虚ろな視界で必死に焦点をあわせる。
「まったく……、情けないことになってるな、アキト」
「……あっ」
そこには償いきれないほどの傷を与えてしまったはずの想い人が立っていた。
「な、なんで……、どうして……」
動揺で瞳が揺れる。
そんな彼を見て、彼女は温かく微笑む。
「ネルガルを甘く見ない方が良い。お前の行動なんかまるっとお見通しだ」
「………………」
何も言い返せなかった。
しかもアキトをさらに困惑させているのは彼女の服装。
普段は黒のスーツとかパイロットスーツとか、とにかくシックな黒系の服が多かったのだが、
今はなぜか清楚な白のワンピースと麦藁帽子。
とても清楚で爽やかな美少女風な格好をしている。
それが珍しくて、彼女の出現と相まってアキトを混乱させていた。
周囲も超絶美少女の出現に色めき立っている。
月光の戦乙女と気付かれ始めている。
「………………」
「なぜ私がここにいるのか……、不思議か?」
アキトの沈黙の意味をそう受け取ったらしい。
悪戯な笑みを浮かべる。その表情も服装と相まって小悪魔的な雰囲気をかもし出している。
「もう傷も癒えたんでな。他の誰でもなく、私が、私自身の意思でお前を連れ戻しにきた」
「………………」
「本来ならともに退院後に早急に職務に復帰しようと思ったら、何故かお前は私に書き置きを残して脱走。そしてこんなところで世捨て人のような状況になって……」
「………………」
「罪の意識に苛まれるのは分かるが、だからといってこんなことを私が望むわけがないだろう?」
「………………」
「………………」
「………………」
「そんなに自分が許せないか?」
「………………」
「私が許すと言ってもダメか?」
「………………」
「………………」
「………………」
「……はぁ、何か喋ってくれよ。これじゃあ私がお前のご機嫌伺いをしてるみたいじゃないか」
「………………」
それでもアキトは何も言うことが出来なかった。
申し訳なくて、情けない自分が許せなくて、どんな想いで彼女と目を合わせれば良いのか、言葉を返せば良いのか……。
「とにかくだ、ここに居ても何も解決しないことだけは確かだ。それにお前を連れ戻すという意思を持っている以上、
お前がここにいる間、私もここにいなければならない。……さすがにそれは酷な話だろう?」
「………………」
「今のところは私とナデシコに帰る気はない?」
「…………(コクッ)」
「ふふふ、そこは反応するんだな。まあいい、じゃあ騙まし討ちで無理やり連れて帰るなんてことはしないから、
取り敢えず別のところで落ち着いて話をしよう?
それぐらいの願いは聞いてくれるだろ?」
「…………はい」
「ありがとう」
穏やかに微笑んだセレナイトは、慈しむようにアキトの頭を撫でた。
数日風呂に入っていないし、外で風雨に晒されていたので完全に世捨て人の姿だったのだが、それを全く気にすることなく……。
美少女のそんなアンバランスな慈愛的行動は周囲をざわめかせ、また心をも奪っていった。
(やっぱりセレナイトさんは優しい。だからオレのことを許してくれる。でもそれはオレの罪が許されたわけじゃないんだ。
セレナイトさんの優しさが罪を見えなくしてるだけで、オレが犯した罪は確実に存在するんだ)
だからいくら彼女が自分を許してくれると言っても納得は出来ない。
月光の戦乙女と謳われる美少女でありエースパイロットでもある彼女に壮絶な傷と恥辱を負わせてしまったのは他ならない自分なのだ。
この罪を贖うことは永遠に出来ないのだ。
「さぁ、着いたぞ」
「………………」
促されて見上げたそこはシティホテルだった。
「お前を探す拠点にするのに利用してるんだ」
セレナイトはそう言って中に入っていく。
「………………」
アキトもあとを追った。
ボーイがアキトの薄汚れた姿に顔をしかめたりもしたが、セレナイトは気にせずに彼を連れて行く。
フロントで鍵を受け取り最上階を目指す。どうやらこのホテルで一番高い部屋を借りてるらしい。
「まあ、私の休養も兼ねているということだ。……もちろん費用はネルガル持ちだ」
悪戯っぽい表情で言った。
最上階に到着し、目的の部屋にも到着。
「……ふぅ」
セレナイトが息を吐いた。
高級そうな部屋、スイートルームだけあって間取りは広く、空間のデザインも素晴らしい。
さらに大きな窓からは大パノラマというような外の景色が見える。夜になれば夜景が美しいことだろう。
「さぁアキト、話をするにしてもまずは風呂に入って来い。それからじゃないとそんな臭いじゃ集中出来ない」
「…………はい」
アキトは浴室に向かった。
「………………」
それを見送るセレナイト。
(はぁ、自分のことながら見てられないなぁ。それにああなったら立ち直させるのに凄く時間が掛かりそうだ……)
相手はかつての自分自身。手に取るように気持ちが分かる。
ちょっとやそっとじゃ今の彼を立ち直させることは出来ないだろう。
(さて、どうしたものか……)
思案顔でセレナイトは言った。
すでに解決出来る唯一の青写真はあったのだが……。
「……上がりました」
浴室から出てきたアキトはバスローブ姿。着ていたものはクリーニングに出した。
「おっ、さっぱりして男前になったな!
……さぁ、そこに座って」
セレナイトはソファーを指差した。
「……はい」
指示に従いアキトはソファーに座る。
セレナイトはカウンターテーブルに用意していたワインをグラスに注いで、彼の前にあるテーブルに置いた。
「これを飲め」
「……え」
「まずはお互いの快気祝いだ。お前は途中で抜け出したから全快ではないかもしれないが、こうして無事に再会出来たことに対するモノでも良い」
「…………」
「ルリちゃん達に救出されなかったら私達はまだあそこで恥辱を受けていたんだ」
「…………」
「あの地獄から解放された祝いといこうじゃないか」
「…………」
セレナイトが手に持ったグラスを口元に……。
アキトはただ黙って下を見ている。
「………………」
「………………」
沈黙。
セレナイトはグラスを口元に近づけたまま、飲もうとはしない。
アキトはグラスを持ちすらしない。
「迷惑を掛けた自分がこんな祝いなどすることは出来ない。……という態度か?」
ジッとアキトを見ながら言った。
「………………」
アキトは無言。
「……どうしてもそんな気にはなれない?」
「………………」
「……私のお願いでも?」
「………………」
「お前のせいで最低な屈辱を受けた私の願いでも聞いてくれない?」
「…………飲みます」
アキトはグラスを持った。
「……ふふ、ありがとう」
にこやかに微笑むセレナイト。
「さぁ、乾杯といこうか」
「……はい」
お互いグラスを持って、チン、側面を接触させる。
そして赤い雫を口に含んだ。
「……んっ」
「…………」
セレナイトの喉がなる。艶やかな声が漏れる。
アキトは無言で、味など気にする必要はないと言うように無骨に飲み干す。
「……ふぅ、美味しいな」
「…………そうですね」
再び下を向くアキト。
「…………ふふふ」
それを見て苦笑するセレナイト。
「もう、お前は本当にどうしようもないなぁ。自己嫌悪に浸るのも仕方ないし、罪を償うつもりでこんな事をしたんだってのも分かる。
でも何の救いもないじゃないか。最終的にお前の行動が成就されたとして何の救いがある?」
「救いなんていらないです。俺はもう生きている価値なんて」
「そんなこと……、ユリカさんが悲しむぞ?
お前が死んだら」
「ユリカは関係ありません」
「私だって悲しい。ナデシコの皆だって」
「……
……でも、これはけじめですから」
「私が望まなくてもか?」
「はい、これは俺に課せられた罰ですから」
「………………」
セレナイトはアキトを見つめる。
もう一度、ワインに口をつけて、それを飲み込んだあと、グラスをテーブルに置いた。
「やっぱりオレ……、戻ります」
「…………」
そう言って立ち上がろうとした。
「だったら私がお前を罰してやろう」
「…………えっ?」
アキトの動きが止まった。
「お前の今の罰はお前が勝手に考えた罰だ。そこに私の想いは一切入っていない。
だとしたらそれはなんて独善的な贖罪なんだろうな。私が望んでない罰を勝手に受けて勝手に死んで……」
「…………」
「だったら私が私の望む形の罰を与える。そしてお前はその罰を持って罪を償う。
そうすればお前の心の咎は浄化する。……違うか?」
「…………多分、少しは楽になると思います」
罪の償いようがなくて死を選ぼうとしていたのだ。
だから被害者であるセレナイト自身が罰を与えてくれるなら、それは今の方法よりもずっと良い。
「なら、これから私がお前に罰を与えるが……、良いか?」
「……はい」
「どんなことをされても抵抗しない?
私の言う通りにする?」
「……はい」
「それが償いだものな?」
「……はい」
「ふふふ、分かった。では早速始めよう」
「……はい」
「まずは目を閉じて、歯を食い縛れ」
「……はい」
言われた通り、アキトは目を閉じ、口をきつく閉じた。
どんなことをされるのか。罰と言うのだから暴行を受けるのか……。
だが優しいセレナイトがそんなことをするだろうか……。
自分のために心を鬼にして制裁をしてくれるのかもしれないが……。
どちらにしても、セレナイトのすることはどんな事でも受け入れる。
アキトの覚悟は微塵も揺れなかった。
「よし、いくぞ」
セレナイトが言った。
そして自分に近づいてくる音がする。
暗くて何も見えない。さらに近づいてくる気配が感じ取れ、
「……んっ」
「んんぅ!?」
次の瞬間、唇に柔らかい感触。
慌てて目を開く。……視界の全面にセレナイトの顔が。
「……ふふふ」
セレナイトは悪戯っぽく微笑んでいる。
「な、ななななななにを!」
「だから罰だ」
「なななななななんで!?」
キスをすることが罰だなんて。
「ふふふ……、ばぁか♪」
セレナイトは楽しそうにそう言うと、もう一度、アキトにキスをした。
「んっ、んんぅ!」
顔を真っ赤にしてそれを受けるアキト。
想い人からこんなことを……。罰と言う名目でこんなことを……。
「……んっ、……はぁ」
「……ぁ、……ああ……、どうして」
口を離す二人。
セレナイトは未だ悪戯な笑みを浮かべ、アキトは呆然としている。
「これがお前への罰だ。ヤマサキや北辰から受けた屈辱をお前に返すことで恨みを晴らす。
どうだ?
屈辱的だろう?」
「…………」
「お前はこれから私がすることに一切の抵抗をしてはいけない」
そう言うと困惑するアキトをイスから引き上げてベッドに座らせる。
そしてその隣に腰を下ろした。
華奢で美しい、妖精のような少女が隣に座る。
月光の戦乙女と言われている人類の英雄である。
「あいつらにこうして何度も胸をまさぐられたな」
その英雄がアキトのバスローブに手を滑り込ませて、彼の胸をさすった。
「うぁ!」
ひんやりとした手が彼の肌に触れる。
その心地良さは想像を絶するほど凄まじい。そして彼女から香る甘い匂いも……。
「こうやって首筋にキスをされながら、胸をまさぐられた」
「あ、あぁ……、セレナイトさん!
やめてください!」
「あいつ等はやめろと言ってもやめてくれなかったぞ?
……むしろその言葉を塞ぐために無理やりキスをしてきたな」
「……えっ、んんぅ!」
再び唇を奪われるアキト。
しかも先程と違って今度は舌を絡ませるようなキス。
「ん……、んんぅ、……ぁん」
「んん!
んぅ!
んんん!」
ねっとりと舌を絡ませていくセレナイト。
アキトは抵抗する素振りを見せるが、押し返すなどの実力行使は取れない。
抵抗するなと言われているし、何よりも想い人からもたらされるこの甘美な快楽に抗えるはずもない。
あの時、何度も自分がやりたかった行為がいま実現しているのだ。
「ふふふ……、罰なのに、ここをこんな風にして」
キスをやめてセレナイトが言った。
彼女の視線の先はアキトの股間へ……。
下着を、バスローブを押し返すような腫れあがった怒張があった。
「あっ、こ、これは!」
「罰なんだからこんな風になったら駄目なんだぞ?」
まるで子どもをあやすような優しい声でそう言って、セレナイトはその怒張をバスローブ越しにやんわりと撫でた。
「ふあぁぁ!」
ビクン!
腰が跳ねる。
セレナイトの手が自分の性器へ……。それは夢にまで見た光景で、まさしく夢のような快感だった。
「罰なのに……、気持ちいい?」
アキトの胸に頭をもたれさせながら、甘えるような声で言った。
普段とのギャップでその声だけで達しそうになる。
「アキト?
私がどんなことをしてもイっては駄目だぞ?」
「そ、そんな!」
無理です!
そう叫ぼうとしたが彼女の手が下着に入ってきたので中断された。
「あ〜あ、こんなに固くして。……困った奴だな」
きゅうぅぅ、
怒張を直接握る。ふんわりと包み込むように……。
「くぅぅぅ!」
それだけで腰が砕けそうになった。
気を抜けばすぐに達しそうだ。
「私の許可なくイッたら反省の色なし。ということだからな?」
「う、うぅ、ぅ」
言葉を返す余裕もない。
「ふふふ、どこまで耐えられるかな?
えいっ、えいっ、えいっ」
ポフッ、ポフッ、ポフッ、下着の中で手を上下する。
「くっ! うぅ!
ううぅ!」
歯を食い縛ってそれに耐えるアキト。
「ほら、こっちの手は恋人みたいに私の肩に回して、もう一つはこうしてスカートの中に入れて太ももを撫でるんだ」
ワンピースの裾から覗く白い太もも、その奥にアキトの手を入れる。
彼の手が柔らかな温もりに包まれた。
「これでますます興奮するだろ?
でも太ももの手を動かしたら駄目だぞ?
自分から積極的に私に触れるのは駄目だ。これは罰なんだから」
「うううぅぅぅ!」
言葉を返す余裕はない。
互いにベッドに座り、
セレナイトは左手でアキトの腰に手を回しながら、右手を下着の中へ……。
アキトは右手をセレナイトの肩に回して、左手で彼女の太ももを撫でる。
まるでラブラブなカップルの睦みあいのような光景。
「ちょっとやりづらいなぁ、下着があると……」
セレナイトはそう言うと下着から手を抜き、股間部分のボタンを外してそこから怒張を取り出す。
「うわぁぁ、待って下さい!」
さすがに好きな子(しかも見た目は年下)に自身の性器を見られるのは恥ずかしい。
快感に耐えつつも我に返って抵抗する。
「私も待てと言っても許されなかったなぁ……。無理やり性器を広げられたり舐められたり」
「あ、ぅぅ……」
「それに恥ずかしがることはない。とても立派でたくましいぞ?」
「…………」
何も言えず真っ赤になるアキト。
セレナイトはそれを見て微笑み、もう一度怒張に触れて、それを上下に擦る。
シュッシュッシュッシュッシュ!
小気味の良いリズムで優しく根本を擦ってやる。
「駄目です駄目です!
これ以上されると駄目です!」
「我慢しろ♪」
楽しそうに言った。
本当に楽しそうに。
基本的に弄ばれてばかりだったので、誰かを弄ぶことが楽しくて仕方がない。
シュッシュッシュッシュッシュ!
「うぁぁぁ!
せめてもっと遅く!」
「ふふ、分かった」
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュ!
ストロークを長く、間隔も長く。
「あぁ、ぁぁぁ、ああっ」
だがそれでもこの快感は凄まじい。
罰と言う咎がなければとっくに達していただろう。
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュ!
「えいっ、えいっ、えいっ、えいっ!」
セレナイトは楽しそうに罰を与え続けている。
「……アキト、アキトぉ」
更にわざと甘えるような可愛らしい声を出して射精を誘発させようとする。
「あぁ、そんな、やめてくださいぃ!」
師匠のそんな声など刺激が強すぎて耐えられない。
「ふふふ……、これは気持ち良い?」
そう言うと今度は彼の胸を舐め始めた。
「ひぃぁぁ!」
思わず女の子のような声を出してしまう。
「ふふふ……」
セレナイトは微笑で応える。
「そういえばアキト、覚えてるか?
私がヤマサキに犯されていたときのこと……」
「うぅ、ううう」
「お前の目の前で無理やりキスをされて、私からするように強要されて……。
お前はただそれを見ていることしか出来なかった」
「う、うぅぅ」
もちろん覚えている。
目の前で恋人のようにキスをする二人。
自分が寝ている横で睦み合う二人。
発狂しそうなほどの怒り。
「私は好きでもない男の口付けを受け、舌を吸われ、口内を陵辱された。
さらに胸も揉まれ、臀部を撫でられ、アソコを舐められ、さらには壊れるほどに突かれた」
「何度も何度も犯され、全てを貪られた。
やめろ、あっ、んんぅ、や、だめっ、……もう、だめぇ」
その時のことを軽く再現するようにアキトの耳元で囁く。
「可愛いですよセレナイトさん。さぁボクともっと愛し合いましょう。ほら、恋人同士の口付けです。
や、やめろ、私はそんなこと、くっ、んんぅ、んっ……、んはぁ、や、だめ、もう……、許して」
「だめ、もうこれ以上は! んっ!
……そんな事をお前の目の前でやらされていたな」
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュ!
アキトへの愛撫は忘れず、言葉を続ける。
「だけど今、この身体に触れることが出来るのはお前だけだ。
肩に触れるのも、太ももに触れるのも、胸を触(さわ)れるのも……、全てがお前だけだ」
「くぅ、うぅ」
「もちろん、この唇も、舌も……。それに……、ここも」
セレナイトはそう言うとアキトの左手を自身の下着に触れさせる。
「いま、私の身体は、全てお前のものだ」
同時に甘い口付けを……。
「んっ」
唇が接触する。
さらに……、
シュッシュッシュッシュッシュ!
怒張を扱くスピードを速める。
「んっ、んんんぅぅぅぅぅぅ!」
アキトがくぐもった声で叫ぶ。
そして彼の視界に火花が散った。
腰が跳ね、同時に融けた。
ビュクン!
ビュクン!
ビュクン!
「んんぅぅぅ!」
凄まじい量の精液が放たれる。
快感が放出される。
それはセレナイトの洋服を、手を、腕を汚していく。
ビュクン!
ビュクン! ビュクン!
ビュクン! ビュクン!
ビュクン!
「……す、凄い量だ」
思わずキスをやめて呟く。
自分の手に、身体に、服に、襲い掛かるように精液が飛び出し、付着する。
「あっ!
あぁぁぁ!
あああ!」
アキトは腰を跳ねさせて、さらにそれに耐えるようにセレナイトを抱きしめる。
「きゃあ!」
突然のことに対応できず、共にそのままベッドに倒れる。
ビュクン!
ビュクン! ビュクン!
「うっ、んっ、んっ!」
射精はまだ続いていた。
全てがセレナイトの身体に掛かっていく。
(まるで精液に犯されてるみたいだな。……これだけで妊娠しそう)
彼の胸の中に抱きしめられたまま思う。
(だが、これである程度の心の浄化は出来たんじゃないかな)
未だ自分を抱きしめながら荒い息をつくアキトを見て思う。
彼が失踪した根本の原因は師匠たる自分への罪悪感。
それを払拭することが出来ないから姿を消した。
だからまずはそれをどうにかしなければならない。
ではどうすれば良いか。
それは被害者であるセレナイトがアキトを許すこと。
彼の罪を許すことである。
しかしそんなことはアキト自身が許さないだろう。
セレナイトが優しいのは周知の通りである。
だから言葉で、たとえ態度をもって許しても結して納得はしない。
ならばどうすれば良いか……。
それは罪の意識を霧散させるために罰を結実させ、成就してやることだ。
すなわちセレナイトがアキトに罰を与えること。
ただしその場合どのような罰が良いか。
罰を与えるという方針はすぐに決まったが、その内容に関してはこちらに到着するまで、
してからも悩んだことだった。
しかしついに一つの案が浮かんだ。
それがこのお仕置きである。
アメとムチを同時に行う冴えた妙案。
「アキトに性的なお仕置きをしちゃうぞ作戦」
である。
(罰を与えると同時にあの時の鬱憤、師匠を犯されるという鬱憤を晴らさせる。
改めて自分の身体を堪能させてやる。そしてついでに罪の意識の浄化も行う)
それが今回の作戦の概要だった。
(まあ本来なら男とこういうことをするなんて死んでも嫌だが、すでにヤマサキや北辰に最低な屈辱は受けてる。
今更かつての自分自身を嫌悪するなんてことはない。むしろあの二人に比べれば天使みたいなものだ)
だからこそ、積極的に女を、セレナイトを演じることが出来た。
もっともその辺は時間の経過によってすでにセレナイトとしての人格の定着があると自身でも感じてはいたが。
「アキト……、落ち着いたか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「アキト……?」
「……は、はい」
いまだ射精の余韻に浸っている様子。
「ふふふ、駄目じゃないかアキト。これは罰だぞ?
勝手にイってはいけないって言ったはずだぞ?
なのにそんなに気持ちよさそうに射精されてはたまらない。反省の色がまったくないじゃないか」
「……すみません」
「これは更なる罰が必要だな」
「……えっ?」
「アキト、そのままベッドに横になれ」
倒れている位置からさらにベッドの中心へと促す。
バスローブは肌蹴、下着から出た性器が力なくうな垂れている。
下着は精液でカピカピ。
「仰向けになれ」
セレナイトはその後に続いて、仰向けになったアキトの腰の部分に座った。
「うわぁ!」
温かく、柔らかな感触がアキトの股間を包む。
どうなっているかはワンピースが邪魔して分からない。
「ふむ、お互い下着が邪魔だな。特にお前のは精液がついていて気持ち悪い」
「す、すみません」
「あ、いや、お前の精液自体は嫌じゃないぞ?」
傷ついたような顔をしたので慌ててフォローした。
「ただこの温くて濡れた感触がな」
セレナイトはそう言うと腰を浮かせてスカート内に手を入れて何やらもぞもぞと……。
アキトの下着と、自身の下着を手に持つ。
「ぅ、……あ」
アキトが頬を赤くする。
ビクン!
ムクムクムク……。
「ぁん、……こ、こらっ、
早いぞ!」
自身のあそこをつつくように起き上がるリトルアキトを感じて同じく頬を染めるセレナイト。
さすがに恥ずかしい。今までとは違う。
「いいか?
これは罰だからな。勝手にイってはいけないし、自分から腰を動かしたりするのも駄目だ」
「は、はい」
頷いたが一体何が始まるのか……。
期待と興奮が半々のアキト。
「いいか?
我慢だぞ?」
再度、念を押してセレナイトはゆっくりと腰を下ろした。
フニュン……、肌の温かさが下りてくる。アキトの怒張を包み込むように……。
しかし挿入はしないようだ。
「……んっ、熱い」
セレナイトが呟いた。
自身の下で自己主張を続ける熱い物体。
性器に直に感じるそれはさすがのセレナイトにもある種の感覚を呼び起こす。
自身のそこで、アキトのそれをムニムニと左右に擦ってみる。
「うっ、あぁ!
セレナイトさん!」
途端に辛そうな声を上げる。
なにせ想い人の性器で自身を擦られている。
俗に言う素股だ。
(ちょっと滑りが悪いな)
精液の残滓だけではさすがに潤滑な摩擦は得られなかった。
セレナイトはベッド脇にある棚から何かの時にと用意していたローションを取り出し、
それをスカートの中に入れ、ぶちまけた。
「ひゃ!」
「つ、冷たっ!」
常温とはいえ、少しの冷たさを感じ、お互い声を漏らす。
だが二人の熱ですぐにそれらは温かくなり、ヌメリだけを残すように……。
「これで普通に動けるな」
そう言うともう一度試しに動いてみる。
「ふぁっ」
「うぁぁぁ!」
ともに声を漏らしてしまった。
(こ、これは……、想像以上に凄い。こちらまで感じてしまう)
自身の性器に割って入ろうとするアキトの熱く固い怒張。
それを前後に擦るとクリトリスまで突き刺すように突いてきて、甘い電流を脳天に響かせる。
(し、慎重にやらないと本末転倒になる。……気をつけないと)
取り敢えず小さく前後することにした。
「い、イッたら駄目だからなっ、……ぁ、……あ、……あ、アキトぉぉ」
ピクン!
身体を痙攣させながら何かに耐えるような濡れた声で言った。
「……は、はいぃ」
アキトも快感に耐えている。
クチュクチュ……、クチュクチュ……、
「んっ、あっ……、ぁん」
「う、うぅ、……うぅ」
スカートの内部で行われている何らかの行為が二人に快感を与えている。
しかしそれを見ることは出来ない。くぐもったいやらしい音が聞こえて来るだけ。
そして甘い刺激を送り込んでくるだけ。
その秘匿された状態が不思議な興奮を呼び起こす。
(駄目だ、このままじゃ遠からず私も達してしまう)
瞳を潤ませ、熱に浮かされたような表情のセレナイト。
もともとが敏感設定なのだからこんなことをすれば肉を切らせて骨を断つ、
どころか肉も骨も貪られて終わってしまう。
(な、なんとかそれは回避しないと)
「あ、アキトぉ……」
甘えるような声で言った。
そしてワンピースの肩紐を外し、ブラジャーも取った。
美しい双丘が露わになった。
男なら誰もが見たいと思っている月光の戦乙女の胸である。
「うぁ!」
声を漏らすアキト。
怒張もビクン!
と反応する。
「んっ」
その刺激で眉根を寄せるセレナイト。
「ば、ばか、……お前はもう何度も見てるだろう?
今更驚くな」
あの場で、彼の目の前で犯され続けたのだ。
その時にいくらでも見る機会はあった。
「ふふふ……触りたいか?」
少し余裕が出来た。
「は、はい」
戸惑いながらも欲望に勝てず頷いた。
「罰なのに?
」
「…………」
「罪滅ぼしなのに気持ち良くなろうとしてる?」
「す、すみません」
「ふふ、冗談だ」
甘い声で呟き、彼の両手を自身の胸に導く。
ムニュン……
「あっ……」
柔らかい感触がアキトの両手を包み込む。
目の前で散々憎き敵に揉みこまれていた胸を自分が触っている。
「んっ……、どうだ?
私の胸は」
「や、柔らかくて、……気持ちいいです」
「いまはお前のものだ。好きにするといい」
「……は、はい」
言われるまま、アキトはセレナイトの胸を揉んだ。
ムニュン、全体を包み込むように揉んだり、横から撫でるように掬い上げたり……。
「ぁん……、う、うぅ……」
そのたびにセレナイトは甘い声を漏らす。
(し、しまった。アキトにオカズを提供するつもりが、こっちも更にピンチになってしまった)
性器への刺激、胸への刺激、同時に襲うそれらが背筋をしびれさせる。
何気なく乳首をつままれて、
「ひゃん!」
鋭い声を出した。
「す、すみません!」
「い、いや……、好きにしろと言ったのは私だから」
顔を真っ赤にして言った。
(このままではマズイ。ここは一気に片をつけないと)
持久戦になればこちらが圧倒的に不利だ。
アキトはすでに一回出している。
(ここはあらゆるテクニックを使ってアキトをイかせないと)
大したテクニシャンではないが、かつては男だったので男のツボは知ってるはず。
しかも相手は自分だ。
(オレって地味におっぱい星人だったからな)
だからこそ胸を触らせたというのもある。
「んっ……、ぅん、……んん」
クチュクチュ……、クチュクチュ……、
腰のグラインドを開始する。
少し強く押し付けて前後に擦り付ける。
「くぅぅ……、んっ、……んぅ」
(まずい、……耐えられない)
自身のそこが吸い付くようにアキトの怒張を包み込む。
そしてそれがローションによって潤滑に混ざり合い、溶け合うように擦れる。
「あっ……、ぅ、……ぅぅん」
余裕がなくなり瞳が濡れる。
人差し指を甘噛みして快感に耐える。
「セレナイトさん!
セレナイトさん!」
一方のアキトも快感に耐えながら、それ以上に快感を貪ろうとセレナイトの胸を揉みこんでいる。
今までこれほど明確な意思を持って触ることなど決して許されなかった膨らみなのだ。
何度それを夢想して一人で慰めていたか。
なのに今はそれが実現し、なおかつシモの世話すらセレナイトの性器でやってくれているという信じられない状況。
もはやこれは罰なのか褒美なのか分からない。
いや、間違いなく褒美。
(う、ぅっ、ぅぅ……、だめだ。……アキトのがクリトリスに当たっておかしくなりそうだ)
裏筋の部分、亀頭の部分がセレナイトのクリリンを潰すようにめり込んで、擦ってくる。
「ぁん、……だめ、…だめ、…だめ」
無意識のうちに首を振りながら呟く。
「イッたら駄目だ。……イッたら……」
「は、はい!
頑張ります!」
その呟きを自分へのものと勘違いしたアキトが叫んだ。
「あっ、……そんなぁ」
悲しげに呟く。
出来れば早くイって欲しいのに……。
このままだと師匠としての威厳が、お仕置きの意味が……。
「……いやぁ、……駄目、……だめぇ」
「は、はい!」
「そ、そうじゃ……、なくてぇ」
もどかしさがセレナイトを包む。
クチュクチュ……、クチュクチュ……、クチュクチュ……、
だがそれでも性器同士の擦りあいは続く。
「ひぃあ、……ん、んぅ……、くぅ」
アキトは変わらず胸を揉み、両手、その指先でセレナイトの乳首をコリコリとなぞり、弾いて弄ぶ。
コリコリ……、クリクリ……、ピン!
「ぁん!
……そ、そんな触り方、……くぅ! ……や、やめろぉ」
ビクン! ビクン!
身体を痙攣させながら呟く。
「す、すみません!」
すぐに優しい揉み方に変える。
「…はぁ、……ぁ、……ぁぁ」
しかしそれはそれで切ない。もっと強く触れて欲しい。
だけどそうされると身体がもたない。
(こ、このままじゃ私が先にイってしまう。それはあまりにも情けないし恥ずかしい)
なんとかしなければ。
肉体的にも、そして精神的にもアキトを追い詰めないといけない。
「あ、アキトぉ……」
「は、はい!」
腰をグラインドさせながら切なそうな表情でアキトを見る。
そして万感の思いを込めるように言った。
「……好き」
「…………」
「…………」
「……えっ」
「アキトぉ、……好き、……大好きぃ」
「せ、セレナイトさん……」
アキトの頬が快感による赤み以外の赤さに侵食される。
耳まで赤くなる。首筋にも赤みが……。
「アキトぉ……、アキトぉ」
甘えるように囁く。
「大好き、……大好きぃ」
クチュクチュ……、クチュクチュ……、
腰は動かしたまま。
「せ、セレナイトさっ、……くぅぁぁ!」
精神的な快感が肉体への快感を助長する。
「アキトぉ……」
胸に触れている手を掴んで自分の頬に持ってくる。
「大好き、アキト」
そして愛おしそうに頬ずりをした。
「くぁ!
そんな、セレナイトさん!」
腰が跳ね上がるような快感。
尊敬すべき師匠に、愛すべき女性にそんなことを……。
すぐに射精感がせり上がってくる。
「イクのか?
駄目だって言ったのに……、イッちゃうの?」
慈愛に満ちた表情。
まるで射精を促すような優しい笑み。
「もう……、仕方ないなぁ、アキトは」
そう言ってさらに腰のグラインドを早める。
「あっ、や、やばいです!
もう!」
あと一歩で射精のスイッチが入る。
そうすればもう止めることは……。
「んっ、んっ……、ぅん……、アキト、……大好き」
セレナイトが心を込めて言い、
彼に覆いかぶさって愛情たっぷりのキスをした。
「んっ、……あっ、
……うぁぁぁぁ!」
ビュクン!
ビュクン!
ビュクン!
精液がほとばしる。
「ぁっ……、ぃ……、っく!」
その熱を浴びてセレナイトが小さく言った。
そして身体を小刻みに痙攣させる。
「うあぁ!
あぁ! ぁ! ああ!」
「ぅっ!
……んっ、……んっ」
アキトは快感に叫ぶように、セレナイトは押し殺すように、
ともに痙攣している。
「んっ……、うぅ……、ぅ」
「………………んっ」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「……………………」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「……………………」
セレナイトが起き上がった。
「アキト……」
愛おしげにアキトの頬を撫でる。
とてもとても……、慈愛に満ちた仕草でアキトを撫でる。
「ふふふ……、私の勝ちだ。……また耐えられなかったな」
「…………」
アキトの表情が曇る。
「いや、良いんだ。別に怒ってないよ」
本心を表すように微笑む。
「でもこれで罰は終わりだ。もうお前は罪悪感を感じる必要はないし、自暴自棄になって死のうとしなくてもいい。
私はもう充分満足した。お前に対する復讐を充分に果たしたよ。……ふふふ」
「セレナイトさん……」
「これからはまた私の下で訓練に励み、たくさん学んで一人前のパイロットになれ。
それが次にお前が出来る私への償いだ」
「……う、うぅ」
アキトの瞳から大粒の涙がこぼれだす。
嗚咽も漏れ出した。
「まったく……、子どもみたいだな」
アキトの頬を、髪を撫でながら言った。
「今までのことを教訓にして、糧にして……。もう一度、一緒に頑張ろう?」
「う、うぅ……、うぅ……」
「ふふ、……今の私はお前のものだ。好きなだけ泣けばいい。好きなだけ傍にいてやるよ」
アキトの気の済むまで傍に……。
「セレナイト……さん」
涙がさらに溢れ、顔がクシャクシャに……。
「セレナイトさぁぁぁん!」
感情の昂ぶりが極限を迎え、
「きゃっ!」
飛び跳ねるように起きて、セレナイトを抱きしめた。
「セレナイトさん!
セレナイトさん!」
「……よしよし、よしよし」
背中を撫でてやる。
「一杯甘えていいぞ?アキト。
私はそれを全て受け入れる。
それがお前への想いの証しとなるだろう。私がお前に憎しみも怒りも抱いていないという……。
そもそも被害者感情など少しでもあれば今までのようなことなど絶対に出来ないはずなんだからな」
「セレナイトさん!
セレナイトさん!」
「それぐらいお前にも分かるだろ?」
「セレナイトさん! 愛してます! 僕と結婚して下さい!」
「うん、だから
…………えっ?」
手の動きが止まった。
「オレ!
これからもっと強くなります。貴方を守れるぐらい強くなります。足手まといにならないぐらい強くなります!
だからオレと結婚して下さい!」
「え、いや……、その」
「結婚が駄目ならまずは恋人からでも良いですからお願いします!
絶対に貴方を幸せにしてみせます!」
「え? ……え?
……ちょ、待って」
「セレナイトさん!
愛してます!」
アキトはそう言うと強く強くセレナイトを抱きしめた。
常に気高く、強く……。どんな困難も軽く乗り越え、恥辱にまみれても不屈の意思で立ち上がり、挫けない。
それどころか失敗した部下を責めることすらせずに、その罪悪感を払拭するために全身全霊でをもって相手を慮る。
その人柄は優しく、温かく、微笑みは美しく、容姿も可憐、妖精のように俗世を超越した美貌。
だが本人はそれを全く鼻にかけない。
こんな人が自分の師匠なのだ。
惚れるなと言うほうが無理だろう。
「もう誰にも貴方を渡したくない。誰にも触れさせたくない!
貴方はもうオレのものだ!
貴方はオレが絶対守る!
……愛してます!
セレナイトさん!」
………………。
…………。
……。
「あ、あの……、その」
セレナイトの頬が染まりだす。
(な、なんだこれ。……恥ずかしい)
顔全体が赤くなる。
(……二重の意味で、恥ずかしい)
直球の告白を受ける恥ずかしさ。
そしてそれをしているのが過去の自分自身という恥ずかしさ。
(若い、……若いぞアキト)
恥ずかしくて顔や耳、首筋がみるみる赤くなる。
まるでむかしのやんちゃ動画を見ているような居たたまれない気分。
「お、落ち着けアキト、……それはきっと気の迷い」
「気の迷いなんかじゃありません!
オレは貴方を心の底から愛してます!」
「あ、ぅぅ……、やめ、て」
それ以上聞きたくない。
「セレナイトさんだってオレのこと大好きって言ってくれました!」
「……そ、それは」
アキトの射精感を煽るためであって……。
「だったらオレたち両想いなんです!
多分オレの方がセレナイトさんを好きな気持ちは強いですけど、
それもいずれきっと同じぐらいにしてみせます!
貴方が惚れてくれるような男になってみせます!」
「………………」
様々な感情がない交ぜになって、セレナイトの視線がうつろう。
抱きしめられたまま挙動不審に動き、自由になる手でベッドのシーツを掴む。
その複雑な感情の中に、確かに彼女が感じているのは「悦び」だった。
(一人の人間として、ここまで直球で愛情をぶつけられると……なにか心地良い)
胸がドキドキしてしまう。
相手がかつての自分自身だというのに心が悦んでしまう。
先程までの性的な戯れによって身体も昂ぶっていてしまっていたので尚更だ。
(心が……、身体が……、女としてアキトの言葉に悦んでしまっている)
それが真実の思いだった。
「あ、あの……、それは」
モジモジとして身体を震わせる。
「愛してます!
セレナイトさん!」
「わっ!
……んんぅ!」
強引に唇を奪われた。
ピチャピチャ……、
テクニックなどない。
相手を気持ち良くしようという気もない。
ただただセレナイトが欲しい。
その一点でのキス。
彼女の口内に侵入し、闇雲に舌を動かす。
「んぅ……、ぁ、んむ……(は、激しい)」
セレナイトはなすがまま、それを受ける。
(青くて……、若々しくて……、獣みたいなキスだ)
必死なのだろう。想いが暴発しているのだろう。
(まあこの時点じゃ童貞だしな。キスの経験もほとんどないだろうし。……ましてや自分からとか)
それにこの必死な感じが決して嫌じゃない。
むしろ可愛いとさえ感じてしまっている。
愛おしいとさえ……。
(オレはもうすっかり天河アキトではなく……、セレナイトになっているんだろうな……)
改めて想った。
「ん、……、はぁ」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……、セレナイトさん!」
キスをやめて叫ぶ。
「は、……はい」
名を呼ばれ、アキトを見つめる。
ふと違和感を感じ、視線を下げる。
……ギンギンに勃起した怒張があった。
(……わ、若い)
改めて想った。
異常なまでの回復力だ。
「……入れて……、良いですか?」
「………………」
真剣な表情、真摯な表情。
「貴方を心の底から愛してるんです」
「……ぁ、ぅ」
見詰め合うことが出来ずに目をそらすセレナイト。
そして想う。
(こ、こんなの、断れるわけないよぉ!
ここまで本気の告白されて断ったら最強に空気が読めない女になっちゃうじゃないかぁ!)
凄まじく凝った大掛かりなプロポーズをされて断れなくなった時のようだ。
「ここで断られたら諦めます。恋人も、結婚も……。だけど受け入れてくれたら、オレは、オレは絶対に貴方を幸せにしてみせます!」
「……あぅぅ」
(いやぁ〜!
やめろよぉ!
そんな風に煽るなよぉう!)
断ったら可哀相。だけど応じたら恋人。
絶体絶命な二者択一だ。
「セレナイトさん!」
「……は、はい!」
「………………」
「………………」
ジッと見詰め合う。
(うぅ……、応じたら間違いなくややこしい事になる)
だが拒否するほどの度胸はセレナイトにはない。
………………。
…………。
……。
なので、諦めたように……、
「……アキトの、好きに、……していい」
小さな声で言った。
「あ、で、でも恋人とかはまだ」
「セレナイトさん!」
「きゃあ!」
押し倒された。
「ありがとうございます!
愛してます!
愛してます!」
「あ、アキト、待って、まだ話が」
「セレナイトさん!
セレナイトさん!」
聞いちゃいない。
「あ、あぁ! セレナイトさん! セレナイトさん!」
「わ、分かったからアキト!
分かったから!」
「セレナイトさん!
セレナイトさん!」
「落ち着いてくれよぉ」
「あっ、すみません、嬉しくてつい」
「う、うん、良いんだ。それよりも」
「はい、分かってます。今から入れます」
「え、……い、いや、そうじゃなくて」
「初めてなのでそんなに上手くないと思いますけど気持ちだけは誰よりもあるので頑張ります!」
「だからそうじゃないよぉ」
「じゃ、じゃあ行きます」
「………………」
心が折れた。
(もう……どうでも良いや。あとで冷静になった時にもう一度)
今はただ黙ってアキトの想いを受け止めよう。
そういうことにした。
上に覆いかぶさっていたアキトは正常位の体勢になり……。
「こ、ここです、よね?」
不安げに呟く。
「ああ、そうだ。……落ち着いてゆっくり入れれば良い」
穏やかな声でフォローする。
すでにローションや愛液で濡れているので簡単に挿入できるだろう。
念のために手を添えて導きながらインサートを補助する。
クニュン……、
先端があてがわれる。
そして徐々に押し込むように……。
ニュプゥゥゥ……
「んぁ……、くぅぅぅぅぅ」
セレナイトが泣きそうな、切ない声を漏らす。
「うぁ……、熱っ」
アキトも、自身を柔らかく、それでいてキツく締め付けるセレナイトを感じ声を漏らす。
自身を包み込むそれは信じられないくらいの熱さで、心地良さで、何よりも相手はあのセレナイト。
すでに二回、思いっきり放出しているから耐えられるが、それがなければ挿入前に暴発していただろう。
「ぁっ……、ぁはっ……、入っ……た」
「は、はいっ」
程よいところまで挿入された。
「あ、……あと、は……、ゆっくりと、一定のリズムで腰を前後に……」
「は、はいっ」
「探るように色々な角度に向かって突くのも良い」
「は、はいっ」
「だけど……、独りよがりに激しく腰を打ちつけるのは駄目だぞ?
そういうのは普通、女にとって辛いだけだから」
「は、はいっ」
「あくまで愛情を込めて、相手を思いやりながら自分も快感をじんわりと感じるように……だ」
「は、はいっ」
「そうすれば想いあっている者同士なら大抵気持ちの良いセックスになるから」
「は、はいっ」
「これから、他の女の子とすることになっても対応出来ると思うから」
「嫌です!
オレの愛する人はセレナイトさんだけです!」
「………………」
頬を染め、複雑な表情を浮かべるセレナイト。
「じゃ、じゃあ!
行きます!」
「……あ、……ぅん」
「いきます!」
許可を得たので、ゆっくりと腰を動かし始めた。
グチュ、グチュ、グチュ……、
ローションと愛液のおかげでとてもスムーズに抽挿される。
「ぁっ……、ぁん……、ぁん」
図らずも声が出てしまうセレナイト。
すでにその前の前戯的な素股で準備は充分整っていた。
何も問題はなかった。
グチュ、グチュ、グチュ……、
「凄い……、これが、セックス」
「ひぁ、……ぁん、……あんっ」
初セックスの感動に浸るアキト。
憧れの人と繋がる幸せ、想い人と一つになる温かさ、気持ちよさ……。
なんともいえない幸福感。本能が感じる幸福感がアキトを満たす。
「ふぁ……、ぁ、……ぁぁ」
そのアキトの抽挿から送られる快感にセレナイトも浸っている。
強制的に浸らされている。
「愛情を込めて……、セレナイトさんへの想いを込めて……」
慮るように抽挿を続ける。
「はっ!
……ぁあ! ……ぅん!
……ぅん!」
愛に満ちた律動を受け、セレナイトはそこからもたらされる甘い刺激に、知らず意識を蕩けさせられる。
今まで一方的な愛撫や陵辱的抽挿が多かった。自分本位なセックスばかりを強要されてきた。(ルリ達も含めて)
このように全てにおいて自分を思い、壊れ物のように大切にして、快感を与えようとするセックスは初めて。
男の時代にユリカと行っていたセックス以来だ。
だが女として、男にこういうセックスをされるのは正真正銘の初体験。
(これが……、女としての……本当のセックス)
相手を尊重し、大切に想う気持ちに溢れたセックス。
「はぁ……、ぁっ……、やっ……、あぁ!」
(駄目だ……、こんなに優しくされたら……、堕ちてしまう)
自身の意思に反して、惚けたように涙が溢れてさえきている。
相手が自分自身だというのに……、アキトのことが本当に好きになってしまいそうになる。
心を堕とされそうになる。
(オレにはユリカがいるのに……。しかも、こんな……、女として男に堕ちるなんて……)
恥ずかしくて天国のユリカに申し訳が立たない。
でも北辰やヤマサキとは明らかに違うセックス。この甘さに耐えられる女などいるのだろうか……。
(この……、女殺しめ……)
恨めしそうにアキトを睨む。
「あっ……、大丈夫ですか?
何か悪かったですか?」
視線に気付いたアキトが心配そうに問いかける。
その途端、抽挿の位置がずれて膣口から掬い上げるような形になり、
「ひぃん!」
セレナの感じる部分を擦り付ける。
「す、すいません!」
慌てて普通の状態に戻す。
「…………(フルフル、フルフル)」
無言で首を横に振るセレナイト。
グチュ、グチュ、グチュ……、
再び、落ち着いた律動に戻る。
グチュ、グチュ、グチュ……、
「はぁん……、ぁん……、ぁん……、ぅぅん」
グチュ、グチュ、グチュ……、
「んっ……、んぅ……、ぅぅん」
グチュ、グチュ、グチュ……、
(あぁ、駄目だ、……軽く、イっちゃう)
両手でシーツをキュッと握って、目を小さく閉じる。
そして……、
「……ふぅぅぅ!」
「うわっ、締まる!」
アキトが思わず動きを止めた。
(あっ、……いまやめられたら……)
あと一歩のトドメを刺されない。
もどかしい絶頂で終わらされた。
「い、今のって……」
「………………」
セレナイトに問いかけるが、
「………………」
セレナイトは無言。
「もう一度、行きます」
「………………」
再び抽挿が開始された。
グチュ、グチュ、グチュ……、
「ひぁ……、ぁ、……ぁぁ」
途端に声を漏らす。
(もしかしてさっきのってイッたのかな?)
セレナの様子を窺いながら思った。
自分も壮絶なほどに気持ち良いが、二回放出したあと、
そしてさらにペースは落ち着いていて自分で調整できる。
だからただ愛すべきセレナイトの熱さ、柔らかさを感じながら彼女に快感を与える。
という何物にも代えがたい幸福を享受するだけ。
それだけで何よりもいまは幸せであり、それが快感だった。
(そういえばさっきの場所って気持ち良いのかな?)
膣口の上に掬い上げるような感覚で抽挿したときのセレナの反応はとても激しかった。
確か角度を変えて色々と抉ってみろ、とも言われていたし……。
試しにやってみた。
ズリュン……、
「ひぃん!」
背中が仰け反った。
「………………」
黙ってその様子をみる。
「………ふぁ……、ぁ、……ぁぁ」
「………………」
セレナは身体を震わせ、瞳を潤ませ……。
「…………えぃ」
すぐに同じ場所を……、
ズリュン、ズリュン、ズリュン……、
「ひぁん!
あん!
あん!」
今までの蚊の鳴くような声と違ってハッキリとした嬌声。
(やっぱりここが気持ち良いんだ)
嬉しくなってそこばかりを攻める。
ズリュン、ズリュン、ズリュン……、
「ひぃぁ、……やっ、やん……、だめ」
ズリュン、ズリュン、ズリュン……、
「だめ……、だめ……、イッちゃう」
イヤイヤと首を振って、シーツを強く掴んで、ギュゥゥ!
目を瞑った。
そして、ビクン! …………ビクン!
…………ビクン!
「ふぁぁぁぁぁ、……ぁぁぁぁ、……ぁぁぁぁぁ」
硬直と痙攣を繰り返す。
(やった、……オレがセレナイトさんをイカせた!)
女をイカせることこそ男の本懐である。
「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
「せ、セレナイトさん、……気持ちよかったですか?」
「はぁ……、はぁ……、……う、うん」
恥ずかしそうに言った。
「その……、凄く上手かったと思う。自信を持って良い。
ただ……私の場合はもともと感じやすい身体だし、……、ヤマサキや北辰に調教されてしまっているから。
他の子よりも扱いやすいと……」
「……なんでそんなことを言うんですか?」
「…………」
「さっきから言ってるじゃないですか。オレにはセレナイトさんだけだって。恋人はセレナイトさんだけだって」
「い、いや……、でもそれは気の迷いで、アキトにはもっと相応しい人が……、ユリカさんとか」
「オレにはセレナイトさんだけです!」
ズン!
「ひぃん!」
いきなり強く突かれた。
「そ、そんな……、急に……」
「オレにはセレナイトさんだけです!
それにセレナイトさんにはオレだけです!
他の誰にも渡しません!
もうこの身体は!」
胸を触る。
「ふぁ!」
腰を触り、お尻を撫でる。
「ぅぅん!」
「この身体は!
全部オレのものです!」
「……もちろんここも!」
ズン!
「ひゃうん! ……だ、だから、強、い……」
「本当に好きなんです!
心の底から貴方を愛してるんです!」
ズン! ズン! ズン!
「ひっ、あっ、あっ、あんっ……」
「本当に……、本当にっ!
……だからもう一度言います!」
ズン! ズン! ズン!
ズン!
「やっ、んっ、だめっ……、動かないでっ」
「セレナイトさん! オレの恋人になって下さい!」
ズン! ズン!
ズン!
「ひぃ! わ、分かったから! 分かったからもっとゆっくり!」
「恋人になってくれるんですか!?」
ズン!
ズン! ズン!
「ち、ちが! ……は、はなっ、しをっ! くぅぅ、ん!…… ちゃ、んと! ぁん! ちゃんと、話を!
……ひぃ!」
ズン! ズン! ズン!
「セレナイトさん! 恋人に!
オレの恋人に!」
劣情、熱情、心に秘めた本能に近い想いを抽挿と共にぶちまける。
若さゆえの激しさ。しかし相手を思いやる気持ちも含むそれは愛情を感じさせ、苛烈ながらも優しい。
微弱な刺激から強力な刺激まで、全ての甘い快感を送り込んでくる。
(こんなのこっちがウンって言うまで続ける気じゃないか!
無理だ!
無理だよぉ!
こんなの耐えられない!)
気持ちの良い場所を突かれながら愛の告白をされて応じない女などいるのだろうか……。
何よりも荒々しい行為のはずなのに、どうしてこんなにも愛を感じるのだろう。
北辰たちに無理やり絶頂させられていた時と同じように荒々しいはずなのに、どうしてあの時よりも心地良いのだろう。
明らかにあちらの方が女を堕とすテクニックは上だったはずなのに……。
「セレナイトさん!
愛してます! 愛してます!」
ズン! ズン! ズン!
(くぅぅ! ……もう駄目だ! もう何も考えられない!
もうアキトのことしか考えられない!)
愛を叫ばれ、愛に侵食された。
セレナイトの心にアキトへの強固ば愛情が芽生え始める。
「セレナイトさん!
セレナイトさん!」
「んっ……、あっ、……んっ」
声を漏らしながら潤む瞳で、必死に想いを伝えるアキトを見つめる。
そして……、
「……ぅん、……なる、……なるから。……アキトの恋人になるからっ」
アキトの首に両手を回しながら言った。
「せ、セレナイトさん!?」
「なる!
アキトの恋人になる! アキト! 好き! 好きっ!」
両足をアキトの腰に絡ませる。
「セレナイトさん!」
「アキト!
アキトぉ!」
お互い見つめあい、唇を合わせる。
「「んっ……」」
ズン! ズン!
ズン!
「んっ……、んちゅ、……んぅ」
アキトの口に嬌声が注ぎ込まれていく。
「んはぁ! ぁ、ぁん! あん!
……アキト! ……アキトぉ! ……この身体は全部アキトのものだからぁ!」
一心不乱に叫ぶ。
「アキト! アキトぉ!
アキトぉぉ!」
「セレナイトさん! セレナイトさん!」
お互いが一心不乱に叫び続ける。
「アキトぉ! 好き!
……大好き! ……大好き大好き大好き大好き!」
もはやその想いしかセレナイトの頭にはないのだろう。
「くぅぅぅ!
セレナイトさん!」
そんな最高の言葉を想い人に、人類の英雄たる超絶美少女に言われて興奮しない男などいない。
二度の大量放出を済ませていた怒張ですらそれは例外ではない。
「あっ!
出ます! セレナイトさん! イキます!」
腰が融けそうな快感と共に射精のスイッチが入った。
「アキト! 中に!
恋人なんだから中に!」
そう言ってガッシリと両足でアキトの腰をホールドする。
「セレナイトさん! ……イ、……っク!
……ぅぅぁぁ!」
ビュクン! ビュクン!
ビュクン!
「ふあぁぁぁ!」
叩きつけられ、ほとばしる精液の感触が子宮を、脳を蕩けさせる。
すぐにセレナイトも達した。
「アキト!
アキトぉぉぉぉ!」
「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
………………。
…………。
……。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
お互い荒い息をつく。
セレナイトの胸に顔をうずめているアキト。
そのアキトの頭を愛おしそうに抱きしめるセレナイト。
「……アキト」
「……セレナイトさん」
見詰め合った。
そして……、
「「……んっ」」
愛情たっぷりのキスをした。
―― 三日後 ――
「いやぁ、さすがセレナイトさんです。無事に天河さんを連れ戻して下さって。
しかも心身ともにすこぶる健康で、すぐに職務に復帰出来るぐらいの体調にして連れて来て下さるなんて」
ナデシコ内、通路でプロスペクターが言った。
「は、はぁ……」
戸惑ったようにセレナイトが頷く。
「やはり貴方は我がネルガルになくてはならない貴重な人材です!
いやはや、本当に助かりました!」
「あ、ありがとうございます」
「これでナデシコにいつもの日常が戻りましたし、戦況も恐らく劇的に変化するでしょう。もちろんこちらに有利なように」
「はぁ……」
「もう何からなにまで貴方のおかげです。貴方は本当にナデシコの、この世界の英雄です!」
「あ、ありがとうございます」
「これからも是非わが社と良好なお付き合いをして頂ければと思っております」
「はい、もちろんネルガルにはお世話になってますから、自分が出来るかぎりのことはしたいと思っています」
「そうですかそうですか!
それを聞いて安心しました!
実は近いうちに貴方を今まで以上に大々的に売り出したいと想っているんですよ。
銀河の歌姫とかそういう感じで」
「え……」
「今でさえ国民的英雄なのですから、歌姫となればこれはもう……」
「いや……、そういうのはちょっと」
「とにかく!
これからもわが社を宜しくお願いしますね!」
「それは良いですけど、でも歌姫は……」
「では私はこの辺で失礼します」
「……え?
プロスさん?」
早々と消えていった。
「………………」
呆然とそれを見送るセレナイト。
諦めて自室へと戻る。
このあとは何をするか……、特には決まって、
コミュニケが開いてアキトの顔が映った。
『あ、あの、セレナイトさん、これから食事でもどうですか?』
「……食事?」
『はい!
オレが作りますから!』
「……まあ、構わないが」
『ありがとうございます!
……そ、その、恋人にオレの料理を食べて欲しくて!』
「………………」
『じゃあ30分後に食堂に来て下さい!
待ってます!』
「………………」
『そ、それと……、そのあとは、……あの、……オレの部屋で』
「………………」
『凄いがっついてると思うかもしれませんが、オレ、いつでもセレナイトさんに触れていたくて』
「………………」
『じゃ、じゃあ食堂で待ってますね!』
映像が閉じる。
「………………」
セレナイトは無言。
ゆっくりと自室に向かう。
そして程なくして到着。
「……………………」
「……………………」
「…………どうしよう」
がっくりと膝をつく。
「どうしてこんなことになっちゃったんだよぉ……」
ポロポロと涙を零しながら言った。
あろうことか自分がアキトと恋人になるなんて……。
「これじゃあユリカに顔向けが出来ないじゃないかぁぁ!」
悲しそうにそう叫んで、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
セレナイトはベッドにうづくまった。
完